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言霊の魔法 (銀バラリレー創作)

「ねぇ皆、そろそろお茶にしない?今日ね、面白いもの作ってきたのよ。」
ロッジでの勉強会に一区切りついてきたころ、あたしはぐるりと視線を皆に回して言った。
「面白いものって何だよ?」
あたしが持ってきた紙袋をごそごそしていたら、待ちきれないのかヒロシが後ろから覗き込んできた。
「んもう、天吾や人吾みたいなことしないの!大人しく座って待ってなさい!」
あたしが軽く、覗き込むヒロシの顔をぴしゃんと叩くと、横に居た光坂クンがぷっと吹き出していた。
「高天さんってたまに子どもみたいだよね。ユメミがお姉さんみたい。」
「なんだと、このやろっ!」
「うわー、止めてよ、高天さん!」
ヒロシが光坂クンにヘッドロックをかけ始め、光坂クンが悶えている。
こういうところが子どもっぽいっていうのよね・・・。
「うるさい、二人とも。私に言わせれば、どちらも子どもレベルだ。」
瞳を細くしてきっと二人を見据える冷泉寺さんの姿は、いつみても綺麗。
最近は大人の女性のような清華な表情が垣間見えたりして、たまに見惚れてしまうのよね。
「で、ユメミ。面白いものってどんなものなんだ。」
いつもの光景を見て淡い微笑みを浮かべながら、鈴影さんが艶やかな声であたしに促した。
「じゃーん、これでーす。」
紙袋の中から個包装され大量に出てきたのは、
「・・フォーチュンクッキーだね!でも、普通に中華街で売ってるのと感じが違うね。チョコの模様があるよ。」


「そうなのよ、煎餅のような生地じゃなくて、ラング・ド・シャのような生地で作ったの。ちょっと待っててね、お茶入れるから。」
「私も手伝おう。」
「わ、ありがとう、冷泉寺さん。」
あたしたち女性陣がお茶の準備に立つと、男性陣は慣れた手つきでテーブルを片づけてくれた。
お茶の準備が整ったので、皆でテーブルを囲んだ。
「じゃあ、いただきましょうね。」
「おー、頂きます!」
元気一杯のヒロシの声が響いて、ヒロシはさっそく口に放り込んだ。
「あ、ダメだよ高天さん。中に紙が入っているんだから!」
「ふぇ?あ、ホントだ。噛み砕く前で良かったぜ。なんだ、こりゃ。」
慌てて止めた光坂クンが、ヒロシに説明する。
「これはおみくじを入れたクッキーなんだよ。なんて書いてあるの?」
「んーと、『金』?」
「そうよ、『きん』でも『かね』でもいいんだけど、あると嬉しいじゃない?」
あたしがそういうと、冷泉寺さんが呆れたように言った。
「即物的すぎるだろ。私のは・・『紅差し指』、ほう、薬指の雅称か。悪くないな。」
「なんだか響きが綺麗だなと思って。」
「ボクのは、『花衣』?どういう意味?」
光坂クンが首を傾げてあたしを見ようとしたら、鈴影さんが答えてくれた。
「花見に行くときに着る女性の美しい衣装をいうんだ。オレのは『薫風』か。風が木の間や水の上を通り過ぎ、その香りを運んでくるよう、という意味だな。ユメミ、どういう思いでこれを作ったんだ?」
「おみくじだと言いことも悪いことも書かないといけないから、どうせなら幸せそうな言葉にしようかなって。言霊って言葉もあるから、この場ぐらいいい言葉で響いてもいいかなと思ったの。」
「・・オレのは『金』ってなってたじゃねぇか。」
「たまに面白いのもあるわよ。楽しいでしょ?」
「さすがユメミ、少女趣味だねぇ・・・。」
光坂クンがしみじみ呟くと、冷泉寺さんが頷いた。くすくすと鈴影さんは笑いながら、お茶を口に運ぶ。
「何が出てくるか楽しみに食べようじゃないか。言霊が宿るんだろ?」
「いっぱいあるから、たくさん食べてね!」



こうやって皆で和やかに過ごせる時間が続けばいい。
願うだけはいいじゃない。



言霊の魔法   Fin

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