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女子旅+α

「ね、薫。男どもは何時頃着くって言ってたっけ?」
「さっきメール着てたけど、もうすぐこっちに着くらしいぜ。」
チェックインを済ませ荷物を置いた部屋でテーブルに向かい合って座りながら、あたしたちは目を合わせた。
「せっかくの薫の独身最後の女子旅なのに、美女丸ってば過保護よね!まさか後で合流するなんて思わなかったわよ。急なのによくもう一部屋取れたわよね。」
「この旅館はあたしの母親の馴染みでね、無理はきくんだよ。あんたの旦那も『あいつを放っておくと碌なことにならない』って言って美女丸の誘いに乗ったらしいぜ。」
「・・・・・・・・・・・・。」
あたしがそう告げてやると、思い切り憮然とした顔をする親友・マリナの額にデコピンをくらわしてやった。
「・・っ、い、いったーいっ!ちょっとぉ、薫っ!せっかくのあんたの誕生祝と婚約祝いを兼ねての旅行に誘ってやったあたしの気持ちを袖にする気っ!?」
「ああ、感謝してるよ。なけなしの原稿料貯めてくれてたんだってなぁ。あたしゃあんたの成長具合に涙が出ちまったよ。・・・せっかくの露天風呂だ、あいつらが来る前に入っちまうか。さ、いこうぜ。」
「ええっ、今やっとお茶菓子食べて一息ついたのにぃっ!もうお風呂~?」
マリナの相も変わらずの風呂嫌いに呆れながら、ガタッと立ち上がる。
「おまえさんももう黒須の嫁なんだから、人妻らしくなってみろよ。・・ぶっ、自分で言ってなんだがおまえさんが人妻ねぇ。あ、ダメだツボに入っちまった。」
つい腹抱えて笑い出したあたしに、マリナはぶーっと膨れて風呂の用意を持って先に部屋を出て行ってしまった。
やれやれ、ついあいつをからかう癖が出てしまう。
笑いを納めたあたしは、マリナを追いかけて行った。






「もうね、すっごい騒ぎだったのっ!いろいろな熱気に当てられて、あたし倒れそうになっちゃったわよ!」
「・・・・・だろうね、ここに着いた途端黄色い悲鳴が聞こえてきたから。」
黒須が疲れたように相槌を打ち、隣にいる美女丸をちらっと見た。
「薫・・・。」
深ぁい溜息を吐いてあたしに視線を向けてきた美女丸に、あたしは悠然と答えてやった。
「しょうがないだろ、まさか男湯に行くわけに行かないし。いちお女将に付いてきてもらって説明してもらったんだけど、一瞬遅かったんだよな。」
「女将より先にあんたが入るからいけないんじゃないのよ。イケメンが女湯に入ってきたって阿鼻叫喚になっちゃったんだもの。ホントに傍迷惑なんだから。」
じろっとお茶を飲みながらあたしを見上げるマリナに、あたしはふふんと鼻で笑ってやった。
「その傍迷惑に、風呂で滑って転びそうになったの助けられ、逆上せる前に風呂から出るよう導いてやったのは誰だっけ?大人になったマリナちゃん?」
くいっとマリナの顎を上げて流し目をくれてやると、マリナがぐぐっと詰まった。
「そ、そういう大人の薫さん、お酒飲んでもいいのかしら?体の為にはあんまり飲んじゃいけないんでしょ?.」
苦し紛れに言うマリナに、代わりに美女丸が答える。
「医者から限度量は聞いてある。オレが見張っているし、まだ大丈夫だ。・・そういえばマリナ、おまえは飲まないのか?いつもは飲むわ食うわ呆れるくらいなのに。」
「え、あたしお腹に赤ちゃんいるし。お酒は飲めないでしょ?」

「「「・・・・・・・は?」」」


思わず3人でハモってしまった。


「ちょっ・・と、マリナ!オレ聞いてないよ!?」
目の色が変わった黒須に、マリナが慌てて携帯を出す。
「え、ここ来る前に病院寄って分かったから3人にもメール送ったんだけど・・。あ、送信出来てなかった。」
あーだから誰もそのことに触れてこなかったのね、と暢気な事を言うマリナに、暗雲を背負った黒須が迫っていく。
「・・・マリナ・・・。」
「あ、あの、ごめんね?えーとでも、今わかって良かった・・よ、ね?」
「・・・薫、部屋に戻るか。」
「ああ、そうだな。黒須、マリナ、おめでとさん。」
あたしたちが出て行こうとするのを見て、マリナが縋るように見つめてくるが、あたしは大きくウインクして手を振った。
・・・しかし、わが親友ながら、黒須が気の毒になってくるぜ。
これからあとは、夫婦で喜んでくれよな、お2人さん。




「やれやれ、爆弾投下だったな。さすがはマリナというべきか・・。」
疲れたように言いながら、女将に呼び出され戻ってきた美女丸があたしに手渡してきたのは、ホットワイン。
「どうしたんだ、これ。」
「和矢がおまえにと持ってきてくれたワインを女将に渡して頼んで作ってもらった。湯冷めするなよ。」
一口飲むと香辛料とワインの味が口の中でほわっと広がり、なんだかほっとする。
「・・これ、適当に作るとすごく飲みにくくなるんだ。こいつは結構、うまい・・。」
ふっと軽く口元に笑みを浮かべ、美女丸もホットワインを口に運ぶ。
「和矢直伝のレシピを渡して作ってもらったからな。薫の体に負担にならず飲めるように調べてくれたんだ。あいつはマメな奴だからな。」
あいつだからマリナとうまくやっていけるのさ、と苦笑する美女丸にあたしも頷く。
「赤ん坊か、良かったよな。抱き上げるのが楽しみだよ。」
あの2人が親になるのか。
想像するとくすぐったくなってきてくすくす笑っていると、美女丸があたしに小さな箱を渡してきた。
「満足がいくものを探していたら遅くなってしまったが、・・・婚約指輪だ。」
細いプラチナのアームに高品質のダイヤがソリテールされた、シンプルな指輪。
左手の薬指にぴったり合うのには驚いたが。
「・・ありがと、美女丸。」
大切にするよ。
「オレ達は、オレ達のペースで進んでいこう。これからも、よろしく頼む。」
「こちらこそ。」



マリナ達には、マリナ達の幸せの行方があるように。
あたしたちも手探りで探していけばいいのさ。



しかし、せっかくの女子旅を堪能したかったと少し残念に思うぐらいはいいだろう?





Fin




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キスの愛撫

瞼に感じる美女丸の唇。片方が終わると、もう片方。
あたしが軽く瞳を開けると、まつ毛を軽く食む。
美女丸の舌があたしの目の際を舐め、くすぐったさにまた瞳を閉じると、美女丸の唇の端が軽く上がったのが気配でわかる。
軽く頬に唇が触れた後、そのまま耳に辿りつき耳介に舌先が入る。
ぞくっとしたものが背筋を走り、あたしが少し身を竦ませると、逃がさないとでも言うように両腕をあたしの背中に回し、浮かび上がった背骨を撫でていく。
耳では中に入った美女丸の舌の為す水音が響いていた。
くちゅ・・、くちゅ・・。
「び、じょま、も、やめっ・・!」
あたしの喘ぐ声に気を良くしたのか、耳の根元にきつく吸い付き赤い跡を残すと、美女丸の唇はあたしのそれに重ねられた。
軽く触れ、深く入り、優しく撫ぜ、激しく求めて。
お互いの息が熱くなるまで触れて、唇が離れると2人の視線が絡み合った。
「・・・・薫、舌出して。」
その声に導かれるように、薄く開いた唇から少し舌の先を出すと、美女丸の舌と触れ合いまた深く貪られる。
美女丸とするキスが好きだ。
愛されてると、実感できる。

のけ反る首筋に向かって美女丸の唇が顎を伝い鎖骨を噛み、あたしを惑わせる。
あたしのいいところを知り尽くした美女丸は、容赦なくあたしを追い立てる。
でも、あたしだけじゃない。
美女丸の体温が、触れる体躯が、漏れる息が美女丸の熱さを知らしめてくれる。

あたしの体を慮って、大切に丁寧に宝物のように抱く美女丸。
だからあたしも応えてやるよ。
両腕を上げて美女丸の逞しい首に絡めて、瞳を合わし蠱惑的に微笑み顎に軽く噛みつく。
あたしの挑発ににやりと口角を上げ、あたしの胸元に顔を埋めてきた美女丸の頭を抱え込んだ。


この女はオレのものだ。
この男はあたしのもの。
2人の密事は夜灯りに包まれて華を咲かせる。
これからもずっと。



Fin