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夢語り (和矢×マリナ)

けたたましい喧噪の中、噴き上がる砂埃に思わず目を擦る。
その瞬間、大きな体躯に羽交い絞めされるように抱きしめられ、覆いかぶされる。
馴染んだ匂い、感じる体温で抱きしめてきたのが和矢だと解る。
大きな肩に手を回すと、ぬるっとしたものが手に触れた。
それがあたしを庇ったせいで和矢が受けた傷から出たものだと解ったとき、あたしは悲鳴を上げた。
「・・・いやぁっ・・!」



「・・・という夢をね、見たのよねぇ。」
「ふーん。」
「あ、ははは、ご、ごめんね?」
「どういたしまして。・・・魘されているからと様子を見ようとしたら、思い切り殴られ、おまけに夢の中でもそんな扱いとはね。」
少し、いや結構、腫れた痣が左頬に残る和矢は、憮然としていた。
横で寝ていたあたしを心配してくれたのに、面目ないです・・・。
「はぁ、でも・・・リアルだったなぁ・・。」
瀬木さんの事件のときの、ガス爆発のことがまだ心に残ってるのかしら。
「・・・オレも、昔のことで夢を見るときはあるよ。でも、一貫性がなくて色々な場面が混ざって混沌としてるし、目が覚めたらそういう夢だった、というのは覚えているけど詳しくは忘れていたりするんだ。」
和矢がこうやって、自分の内面のことをポツポツと話してくれるようになったのは、一緒にいるようになって随分後になってからだった。
「いつだって、あんたはいざというときあたしを庇ってくれたわよね。さっき見た夢みたいな状況にもしなったら、きっと同じようにしてくれるのよね・・・。」
そっとお腹に触れながら言うあたしに、和矢は後ろから抱きこむようにして大きな手を重ねてきた。
「マリナは今、初期の時期だから情緒不安定になってそんな夢を見たんじゃないかな・・・。それにさ、勝手に殺すなよ。夢の中とはいえひどいよな。」

何があっても、おまえとこの子は守るよ。


聞こえるか聞こえないかぐらいの細やかな声で和矢はそういうと、あたしの瞼に軽くキスをする。

「もうこれで、悪い夢は見ない。」

もう一度瞼にキスされ、そっと目を開けると、黒いくせ髪の下の瞳が甘やかに微笑んでいた。
ああ、そっか。
あたし、和矢の笑顔を見るのが大好きなのよ。
今までにない経験に気持ちが揺らいで、これからどうなっていくのか不安になってあんな夢みちゃったのかも。

「和矢・・・、ありがとう。」
そう言ってあたしが和矢の頬にキスをすると、ぎゅっと抱き込んでくれた。

恋は落ちるもの、愛は満ちるもの。
そうやってあたしたち、これからも過ごしていくのね。






Fin


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繋いだ手 3 (和矢×マリナ) 最終話

きょろきょろしながら廊下を歩いていると、ロビーから少し離れたところに壁に凭れて、和矢と狭山くんはいた。
和矢は黒シャツに黒いネクタイをはめ、その上にグレー地に白の細い縦ラインの入った仕立てのいいスーツを着ていて、精悍な彼によく似合っていた。狭山くんは薄いグレーの格子柄のシャツをノーネクタイで襟元を広げ、濃いこげ茶のスーツの袖を肘まで捲りあげている。こなれた雰囲気でよく彼に似合っていた。
2人ともただの悪戯小僧だったのに、すっかりいい男になっちゃったなぁ・・・。
ちょっと自分を顧みて落ち込みそうになりながら、あたしは彼らの後ろに回り込むように近づいていった。
ふっふーん、驚かしてやろっと!
そう思いながら和矢達のいる壁の後ろにいき、回りにある植物に埋もれていたら、
「まさか黒須が池田と付き合ってるなんて思わなかったよ。あいつ転校ばかりしてるから連絡つかないだろ?よく捕まったな。」
という狭山くんの声が聞こえてきた。
うーん、あたしの話されてたら出て行きにくいじゃない。陽子ちゃんが狭山くん探してるのにな。
「マリナがパリに取材に行くときオレも行く用事があって、通訳してほしいって電話があったんだよ。あれがなければ今はあるかわからないな。」
和矢が苦笑しながら、神秘的な瞳を狭山くんに向ける。
「・・マリナはやらないよ?いくら欲しがっても。」
狭山くんが目を瞠って和矢を見た。
「黒須!」
「マリナと再会してから、マリナを欲しがる男がたくさんいた。・・事情があってマリナを託したり置いていったりしたことがあった。状況的にしょうがなかったかもしれないが、マリナも他の人も傷つけた。オレが一人で大人になったつもりで身を引けばいいと思っていたんだ。・・でも、それはマリナに向き合わないだけの無責任じゃないかと気づいたんだ。オレもマリナもお互いを思いあっているのなら、二人で考えていかないといけないのに。」
無言で和矢を見つめる狭山くんに、和矢は踏み込むように言った。
「だから、もう誰にもやらない。オレはマリナと一緒なら、これからも一緒にいるためにならどこかへ堕ちたっていいんだ。もう、決めたんだ。」
和矢はそう言うと、隠れているあたしに気づいていたのかあたしに近づいてきた。
あたしは、ぽろぽろ泣いていた。
和矢はそんなあたしの顔を隠すようにあたしを抱き上げ、狭山くんに言った。
「狭山、悪い。オレ達もう帰るよ。皆によろしく言っといてくれ。マリナがここにいるということは、誰かが狭山を探しているんじゃないか?」
「・・陽子、ちゃんが・・・。」
あたしがもごもごと言うと、狭山くんは軽くため息をついて言った。
「OK、もう行くよ。・・・池田、大変そうだけどがんばれよ!黒須、またな!」
眩しそうに顔を顰めながら、狭山くんは戻っていった。



「・・和矢、私これから彼の所に泊まってくるし、お父さんも今日は帰ってこないから。・・・ちゃんとしなさいよ?」
顔を和矢の胸に押し付け、抱き上げられたままのあたしを見て綾香さんは全て納得したのか、そのまま出て行ってしまった。
そのまま和矢の部屋へ行き、ベッドに腰掛けさせられる。
和矢は涙でぐちゃぐちゃになったあたしの顔を熱いタオルで拭いてくれた。
大きな手であたしの頬を覆い、軽く唇を重ね合わせた。
「・・・いいよ。」
あたしも、和矢と一緒なら。どこかへ堕ちる事があってもいいよ。
それで全て和矢に伝わったと思う。
華が綻ぶように微笑んでくれたから。
和矢の手が後ろに回り、ワンピースのファスナーを下していく。あらわになっていく背中を撫でるように手がなぞっていく。
和矢があたしの首元に唇を寄せ、まだ薄く残っているキスマークの上を噛む。
その甘い痛みに身を竦ませ、あたしは目を閉じた。




Fin.

繋いだ手 2 (和矢×マリナ)

「わぁ、久しぶりね!美樹ちゃん、元気だった?」
「マリナちゃん、黒須くんから連絡あったんだってねぇ。」
ガヤガヤとざわめくホテルの一室の中へ入ると、懐かしい顔並みを見て嬉しくなった。
あたしはあまりこのクラスには居れなかったけど、それでもなんとなくは名前を憶えているものなのよね。
「おっ、池田じゃん!おまえ、ホントに成長してねぇなぁ・・。一発で解ったわ!」
今回のクラス会の幹事である狭山くんがあたしを見つけ、頭をぐりぐり撫でてきた。
「ちょっと止めてよ、せっかくセットしてもらったのにぐちゃぐちゃになるじゃない!あんたって相変わらず悪ガキキャラなのね!」
この狭山くん、中学の時和矢と組んで悪戯ばかりしていたのよね~。よく張り倒しにいったなぁ。
あたしの後から入った和矢はいろいろ挨拶していたけど、あたしと狭山くんが話しているのを見てこちらにやってきた。
「狭山、久しぶりだな。今回は幹事お疲れさん。」
「おー黒須、久しぶり。オレは大したことしてねぇよ。しっかし池田、懐かしいなぁ!おまえ今何やってんのよ?」
狭山くんがあたしの首に腕を回し、グーの手で頭をぐりぐりしてくる。
「あたしの夢だったマンガ家やってるわよ。ちょっと、いい加減離しなさいよ!年頃の女性にやることじゃないわよ!」
「年頃の女性?おまえがかぁ?七五三の間違いじゃねぇの?」
「なーんですってーっ!」
「はいはい。マリナ、無駄に暴れるな。狭山も止めとけ。」
和矢が長い腕を伸ばして狭山くんからあたしを引き上げた。ちょっと、邪魔すんじゃないわよ!礼儀ってもんを教えてやるんだから!
「・・・何、おまえらもしかして付き合ってんの?」
あたしが和矢に抱きかかえられながら文句を言ってたら、狭山くんが不思議そうに聞いてきた。
「そうだよ。・・ほら、マリナ。あっちに目当ての立食あるから食ってこいよ。ただし、これ以上コロコロしない程度にな。」
和矢、あんたまで酷い!え~い、こうなったら食べてやるっ!
あたしはプンプン怒りながら、同級生の間を潜って立食のテーブルへ向かっていった。



「ねぇ、幹事の狭山くん知らない?」
あたしはお腹が満たされて回りを見渡す余裕が出てきた頃、近くに居た陽子ちゃんが狭山くんを探し始めた。
「どうしたの?」
「狭山くんに聞きたいことがあって探してるんだけど・・。」
「狭山なら黒須と部屋出て行ったぞ」
部屋の扉の近くに居た大塚くんが教えてくれた。
「じゃ、あたし探してくるわ。和矢もいるし。」
「なんだよおまえら、昔はケンカばっかりしてたくせに。」
あたしが出て行こうとすると大塚くんにからかわれた。
あたしはあっかんべーと舌を出してやった。
「いろいろあるんだよーだ。」


繋いだ手 1 (和矢×マリナ)

「同窓会?」
『そう。オレとおまえが中1のとき同じクラスだったときのだよ。おまえは1ヶ月しかいなかったけどな。・・幹事の狭山から電話があったから、おまえのことも言ったんだ。おまえに連絡つけたけど捕まらなかったから良かったって言ってたよ。どうする?行くか?』
受話器越しに響く音色のような和矢の声が心地いい。
「そうねぇ、今月は原稿料がいつもよりちょっぴり多かったし・・。行くわ!あたし、同窓会って行ったことないの!」
『そうだと思った。姉貴がおまえを飾りたてるって手ぐすね引いて待ってるぞ。覚悟しとけよ!』
さも可笑しげに言う和矢に、ちょっと辟易しながらあたしは言った。
「綾香さん、お淑やかな雰囲気なのにパワフルだもんね・・。」
『おまえとタメ張るよな。』
否定しないわよ!悪かったわね、あんたの姉と彼女が草食系じゃなくて!


「マリナちゃん!私が中学生のとき着てた服なんだけど綺麗だから置いておいたのがあるの、こっちに来て!」
和矢の姉の綾香さんが、同窓会の朝に迎えに来てくれた和矢と共に家に入ったあたしの手を引っ張りずるずる引きずっていく。
哀れドナドナよろしく連れられていくあたしを見て和矢が肩を揺らして笑いを堪えている。
綾香さんに初めて会ったときはびっくりしたのよ!
和矢と同じ黒いくせ毛をくるくると長く伸ばし、長くふさふさとしたまつ毛に覆われた黒く大きい瞳、小さな鼻、バラの花びらのような唇、背はあまり高くないけど華奢な身体からはいい香りがするの。
「ああ、あなたがマリナちゃん?和矢が中学の時よく話していたの!おもしろい奴がいるって。二人がいろいろあって付き合うようになったって聞いてから、なかなか会わせてくれないんだもの~。会えて嬉しいわ。私、黒須綾香っていうの。不肖の弟をよろしくね!」
初対面でのマシンガントークにさすがのあたしもタジタジよ!
でもすっかり気があっちゃって、会うと盛り上がってしまうのだ。
まぁ今日は引きずられてるけど・・・。


「う~ん、この頭がもう少し小さかったらねぇ。何かで削っちゃおうかしら・・・。」
ふわふわシフォンのパールベージュのミニワンピースを着たあたしに綾香さんがしみじみ言った。
それ、昔ジルに似たようなこと言われたことある・・。削ったら死んじゃうわよ!
ちょっとぶーと膨れたあたしを見てうふふと可愛く笑いながら、綾香さんが髪をセットし始めた。
「あら、マリナちゃん・・。」
綾香さんがふと手を止め、あたしの耳元で囁くように涼やかな声で言った。
「首元の見えるか見えないか微妙なところにキスマーク付いてるわ・・。大丈夫、見えないようにセットしてあげるけど。和矢、ああ見えて独占欲強いから。ちゃんと考えてこんなところに付けたのね。」
あたしはくすくすと笑う綾香さんに鏡越しで目が合い、真っ赤になって顔を伏せてしまった。
ううう、身の置き所ない・・・。
「あら、照れなくていいのよ。かわいいわね!ホント、和矢ったらよくやるわよね~。」
きゃらきゃらと笑う綾香さんにあたしは引き攣った笑顔で返した。
か、和矢~!覚えときなさいよ~!


占いの真偽 番外編 ~恋の歌~ (和矢×マリナ)

「・・和矢はずるい。もう、知らないもんっ・・・。」
「何拗ねてるんだ?今までオレの下で・・啼いてたくせに。」
「そ、そういうこと言わないでっ。エロ和矢っ・・。ちょっと、変なとこ触らないでっ!」
「ここはオレの部屋。今は夜中。オレ達はベッドの中にいる。・・・触って、何が悪い?」
月明かりが入る中、薄明るくあたしたちを照らしている。
さらさらとシーツが二人の移動に合わせて音を立てる。
両腕をあたしの横に立てあたしを見つめる和矢をあたしはキッと見つめた。


「・・・モテモテだったじゃないっ。今日大学のキャンパスまで迎えに行ったらっ。ちゃんとこの目で見たんだから、女の子に囲まれてるの。もっ、あたしなんか触らなくていいでしょっ、ちょっと、止めってっ・・んんっ。」
和矢があたしの頭の横に立て肘をつき、あたしにキスをする。
「ヤキモチ焼いてるのか、子ども体型のマリナちゃん。・・こんなところでまで意地はるんじゃないよ。あたしだけ見てって、言えばいいじゃないか。誰も見ないで、あたしだけよって・・。」
「そ、そんなこと・・・。か、和矢なら言えるの?あんただって、あたし以上に意地っ張りじゃないっ。だから、やっ、背中撫でないでっ。」
「だから言ってるだろ?口に出さなくても、こうやっていたら伝わるだろ。マリナにも。わかるだろ?」
「和矢っ・・。やぁっ。」
「オレは、マリナにだけしか伝わらなくていいんだよ。だからマリナも・・・オレにわからせてくれ。」


伝わる鼓動。
強く抱きしめあう身体。
和矢の中で荒れている嵐とあたしの中に残される雨。


Quand tu dors pre`s de moi
J'ai le coeur au bout des doigts
Je t'aime


和矢があたしを抱きしめながら歌ってくれる。
和矢の心地よい声音と暖かい腕に囲まれて、あたしは眠りの森へ行きそうになる。
「ねぇ和矢、なんて言っているの?」
「さぁね。・・・さ、もう寝るんだ。起きたらアメリカへ一緒に行くんだから。」
「うん・・・。」


君が僕のそばでねむるとき
僕は指の先までドキドキするよ
愛してる


Fin



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