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短編創作 「ふたりの会話」 (美女丸×薫)

*こちらの短編は【創作(SS)】として書庫を作ったところにありましたが、世界観がこちらなためこの書庫に移動させました。(2014.1.4)



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「薫、入るぞ。」
声がかかると同時に開かれる障子。
「・・・いくら自分の屋敷だからって、ちゃんと了承もらってからにしろよな。」


急ぎの用でもあったのかよ、まだ着替えの途中だったんだぞ。


「ふ・・・ん・・。」
いくらかの不満を抱えた雰囲気でいるあたしに、眇めるように見つめる美女丸の視線が絡みつく。
「・・なんだよ。」
「いや、垣間見える鬱血の跡が色っぽいと思ってな・・。薫、それを見せるのはオレだけにしろよ。ああ、でも・・・。」
そう呟きながらあたしの傍に来た美女丸は、あたしの左耳の後ろに少し骨ばって長い指を這わせた。


「・・・これは、男避けになるな。」


そこに残るのは美女丸に付けられた跡。
こいつはいつもそこに跡を残す。誰も取りゃしないと思うのに。




「今さら何言ってんだか。・・・静香、わかっててやってるんだろうが。」
あたしの耳にあてた静香の手の上に自分の手を重ねながら、あたしは静香に身を寄せた。
静香の耳の下、あたしが静香に付けられたのと同じ場所を強く吸いあげ同じ跡を付ける。


「・・これは女避け。」
「薫、朝から煽るな。」


「仕掛けてきたのはそっちだろ。・・・今は無理だ、今晩優しくしてくれ。」
「・・・善処しよう。」






Fin.
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Category: 美女丸×薫

約束の地 番外編 ~曖昧さ回避~ (美女丸×薫)

「・・・薫、それは、新手の嫌がらせか何かか?」
美女丸が問いかけたいような諦めたような表情で、あたしを見た。
「ふふん、おまえがあたしのヴァイオリンを久しぶりに聴きたいって言ったから弾いてやったんだろ?」
使い終わったヴァイオリンを大事にしまったあたしに、美女丸は軽く溜息を吐くことで答えた。
「なんで『関白宣言』なんだ・・・?」





「オレはこの歌はあまり知らないんだ。」
律儀な美女丸は、自分の部屋でパソコンで書類作成をしていたのでそのまま検索をかけたようだ。
「あたしも最近覚えてちょっと弾いてみたのさ。・・『俺より先に寝るな』とか『めしはうまく作れ』とか歌詞にあるけれど、根底にあるのは相手に対する不器用な想いなんだよな。聞きかじったとき、なんとなく美女丸を思い出したんだよ。」
「・・・この歌詞にあるようなことをおまえに求めるのは大それたことが多いとは思うがな。」
苦々しく言う美女丸の言いぐさがあまりにもしみじみしてて、あたしは大笑いしちまった。
「さすが美女丸、長い付き合いなだけある。でもおまえだってな、この歌詞にあるように浮気すんなよ?『たぶんしないと思う』とかいってんじゃねーぞ。」
「だれが言うか。・・・ああ、でもこれはおまえに言っておきたいな。」
そういって美女丸があたしを呼び、あたしは美女丸の隣に座り込み一緒にパソコンを覗き込んだ。
美女丸が画面に人差し指を当て、文字をなぞりながら話す。
「『俺より先に死んではいけない 例えばわずか一日でもいい 俺より早く逝ってはいけない』・・・これは、本当にそうであって欲しいんだ。薫もこの歌詞見て、そう思って生きてくれたら嬉しい。」
美女丸は、あたしの体をこれほどもなく心配している。
だからこそ、自然にこの台詞が出てくるのだろう。
「・・・っ、あたしにおまえを見送って欲しいってんなら、あたしはもっとずっと、あんたといたいよっ・・。」
潤みそうになる瞳を顔を逸らすことで誤魔化していたら、そっと美女丸の大きな手が頬を覆った。
「オレは今まで誰にも口出しされたくないことがあったから、ずっとこの場所で踏ん張ってきた。・・・だから、やっと言える。」
あたしと美女丸の間を緩やかな風が通り過ぎた。






「結婚しよう。」
「しょうがないな。一緒に、いてやるよ。」




Fin

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約束の地 5 (美女丸×薫) 最終話

ひたひたときれいに磨かれた長い廊下を歩く。
夜の帳が下りたけれど、薄明かりが灯されているので戸惑うことはない。
これから行うことに惑う事がないわけじゃない。
だけど、自分からの一歩を、示したかった。



すーっ・・・と襖を開き、そっと室内に入る。
薄暗闇の中、こちらに背中を見せて眠る・・美女丸の姿があった。
そっと近寄ろうとしたとき、
「・・・こんな時間に女が男の寝所に来るとは、感心せんな。」
やっぱり、目覚めてたか。
あたしはくすくす笑いながら、美女丸の蒲団に入り込んだ。
「・・・夜這いに来た。」
「何言ってんだ、おまえ・・。」
「こうでもしないと、美女丸、先に進まないだろ?あたしの体調一番男だから。・・なぁ、静香。静香は、ずっとあたしを待っててくれたんだろ?ありがとう・・。もう、待たないでくれ。」
あたしはゆっくりと、静香に覆い被さるようにして口づけをした。
静香の半開きの口に舌を緩く差し入れ、静香の袂に手を掛けそっと広げた。
「男を煽ってどうする・・?止めてくれっていっても止めてやれないぞ?」
少しづつ激しくなる口づけの合間、自分に上にいるあたしの腕を掴みながら静香があたしの顎を舐めて確認した。
「受けて立つよ・・?」
静香の瞳を覗き込み、強い想いを込めてあたしが見据えると、静香は体勢を切り替えあたしを蒲団に沈み込ませてあたしの身体を撫ぜてきた。
「上等。」


静香の大きな手があたしの全身を隈なく触れる。
たぶん静香の唇が降れていない所は、あたしの身体にはない。
とろかし、とろかされ、静香を受け止める。
「・・っ、薫、初めてか・・・。」
体の内に感じる痛みはお互いにあって、赤いしるしが蒲団を汚す。
「・・あた、しは結構波乱万丈な人生生きてるんでね、そんな暇、なかったのさ・・。」
「オレは、おまえを見つめてきたときからそういうことはない。・・これからも、おまえだけだ。」
ずるいよ、静香。
そんなこと言われたら、身体が素直になっちまう。
静香にも伝わってるのだろう、あたしを強く抱きしめる身体が震えてきたから。
「薫、薫っ・・・!」
静香があたしを呼ぶ声が、あたしが静香の背中に立てる爪の音が、室内に小さく響いていた。




「・・・ちゃんと赤ん坊ができないようにしてくれたんだな。やっぱり、あたしの体を心配して?」
「そうだな。主治医の許可を得ないといけないからな。そういうものは授かりものだが、おまえがいないとどうにもならん。」
あたしは先程と同じく美女丸の上に乗り、広い胸に顔を預けていた。
睦み合ったあと、そのままの体勢で二人とも眠っていたのだが、美女丸はこの体勢がお気に召したらしく下ろしてくれないので、まぁいいかと思いあたしもそのままでいた。
「そういえば美女丸は結構経験ありそうだな・・?ふん、気にしないけど。」
「・・・それが気にしてない顔か?あとまた『美女丸』に戻ってるぞ。」
「ふふん、静香って呼んでやるのは特別なときだけさ。普段は美女丸の方が慣れてるからな。・・・あ、そうだ美女丸、あたし明後日イギリスに行くよ。」
途端に美女丸の眉間に皺が入る。
「・・・なんだと?」
「野暮用があってガイのところに行かないといけないんだ。・・おい美女丸、顔が鬼みたいになってきてるぞ?別にあたしとガイは何もないんだからな?」
「・・・マリナからおまえとガイはキスしたことがあると聞いているが?」
何年前の話だよ!?
「オレはおまえとこれを最後にする気は毛頭ないぞ?どこに行っても奪い返しにいくからな?」
段々力が込められていく腕の中で、あたしはやれやれと溜息をついた。
「すぐ帰ってくるよ。・・・ここはおまえとの約束の地なんだから。」
「そう言われたら行かさざるをえんが・・・。早く帰って来い。待ちきれなくなったら迎えに行く。」
「・・・今までの反動か、美女丸が行動的だな。」
「もうオレは自分のしたいように動く。遠慮はしない。」
はっきりと断言する美女丸の唇を、上からそっとあたしの唇で塞ぐ。
「しょうがない奴だな・・・。」
そう呟き美女丸と瞳を合わせたとき。
ばったーん!とものすごい音が鳴り響いた。
「蘭子!」
美女丸があたしをそっと下ろすと、着ていた浴衣を羽織りなおした。
どうも美女丸を起こしに来た蘭子さんが、あたしたちを見て仰天して失神したらしい。
「薫、おまえはそこにいろよ。オレは蘭子を運んでくるから!」
巨漢の蘭子さんを抱え、美女丸は部屋を出ていった。
あたしはくっくっくっと笑いを堪えながら、蒲団の中でうつ伏せになって頬杖をついた。
「どこかへ行っても、ここへ帰ってくるのは楽しいよ。」
それは美女丸、おまえがいる場所だからさ。





Fin



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約束の地 4 (美女丸×薫)

流鏑馬騒動から2日経った。
あれから美女丸とは特に変化はないように思えた。
普通に話して、日常を過ごしていたけれど。
あたしの中では、漣があった。





「オレは墓参りに行く。・・・一緒に、来るか?」
少し暑さが和らいで心地よい風が通り過ぎる日に、美女丸から声を掛けられた。
美女丸のあたしを見つめる瞳が少し切なげなのは、気のせいだろうか。
「いいぜ、お付き合いするよ。ここから、遠いのか?」
「少し山道を歩かなければならないが、そう遠くはない。・・・妹の、月命日なんだ。」




鬱蒼と茂る木々を抜けた場所に、ひっそりとした墓所があった。
あたしより不器用な美女丸の掃除を手伝い、手を合わせる。
若くして亡くなった、美女丸の妹。
そうか、美女丸も兄貴だったんだな、とふと思った。




墓参りの後、美女丸から少しこの道を抜けると街を見渡せる場所があるから行ってみないか、と言われたので休憩がてら行くことにした。
ざぁっと抜ける風に煽られ顔を上げると、眼下に甲府の街を望んだ。
ああ、気持ちいい・・な。
こんな気分は久しぶりだった。
「ここは、とっておきの場所でな。誰も、連れてきたことはない。おまえが初めてだ。」
持ってきた冷たいお茶を飲みながら、美女丸と共に柵に寄りかかり体を斜めにして向かい合う。
「ふふん、そりゃ光栄だね。美女丸の秘密の場所に連れてきてもらったってわけだ。」
「ここだと、ちゃんと話せそうな気がしてな。」
あたしが見つめる先で、美女丸が静かに語りだした。
「・・・巽さんがおまえを想っていること、おまえが巽さんを想っていることはどうしようもないことだと思う。人の想いはどうすることもできない。巽さんがしたことは、それしかなかったのかと思うがな。オレの妹・・美夜の死と重ねていうことは出来ないけれど、人が死ぬのは・・悲しいことだ。」
美女丸があたしの頬に軽く手をあて覗き込んでくる。
「巽さんの想いを組み追いかけないおまえをずっと見てきた。秘かに苦しみながら生きようともがくおまえを見て行こうと決めた。おまえがうちに訪れるときを待つのは楽しかったんだ。」
あたしの瞳から溢れてくる涙を受け止めながら美女丸はそっとあたしを抱きしめ、耳元で囁いた。
「巽さんを想うその心ごと、オレにおまえをくれないか。」
あたしは顔を見られないように美女丸の肩に顔を埋め、美女丸の逞しい身体に囲まれた。
「・・・しょうがないから、くれてやるよ。」
こんなあたしでいいならな。
「後悔、しないのかよ・・・?」
嫌がるあたしの顔を無理矢理見た美女丸は、その唇をあたしの唇に重ねながら言った。
「するわけがないだろう。」
さわさわと木々の中に吹く風の中で、あたしたちは長い時間一緒にいた。


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約束の地 3 (美女丸×薫)

ざんっ・・・と疾走する馬上から、美女丸が的に鏑矢(かぶらや)を射る。
鎧直垂(よろいひたたれ)を着て腰に行縢(むかばき)、足に物射沓(ものいぐつ)をはき、太刀を負い刀を差した美女丸は精悍だった。
あたしは蘭子さんから貸してもらった古書の中身を思い出しながら、神社の外れの林の木に凭れて流鏑馬の神事を行う美女丸を眺めていた。
ここは穴場の場所らしく、蘭子さんがこっそり教えてくれたところだ。


・・・馬を馳せながら矢を射ることから「矢馳せ馬」と呼ばれ、時が経つに連れて「やぶさめ」って呼ばれるようになったんだったかな。
何にせよ、甲府の若様によく似合うって素直に認めてやるぜ。口には出して言ってやらないけどな。


一の的、二の的とを見事に射る美女丸に見物人から歓声と溜息があがる。
あたしはそれをぼんやりと見つめていたけれど、不意に頭がくらっとした。
この場所は思いがけずむっとしていて、今日は結構気温が高い。
湧き出してきた吐き気と眩暈、冷や汗。
やばい、・・・熱中症か?
あたしは片手で口を押さえ、どんどん悪くなる体調をどうにかしようとした。
水分を、買いに、行かな・・・。
そこまでしか、意識が保てなかった。
遠くなる意識の中で、悲鳴と驚愕の声が上がる中、ドカッドカッと大地に響く蹄の音がこちらに向かっているのがわかった。
けして軽くはないだろうあたしの体を引き上げる腕を感じた。
馬に乗せられたあたしに振動をなるべく感じさせないように大きな体躯に抱え込んだ美女丸だった。

ちらと顔を上げるとこちらを睨みあげる美女丸と目が合った。
「馬鹿者!」
そう吐き捨てた美女丸の声を聞いたあたしは、「馬鹿ってなんだよ・・・。」と呟いたあと気を失ってしまった。



さやさやと流れる風を感じる。
そして、武骨なくせに触れられると気持ちいい指があたしの前髪を優しく沿いでいく。
その感触でゆっくりと目を開けたあたしを、美女丸が覗き込んでくる。
「・・・気分はどうだ。」
「ああ、悪くない・・・。ここは、美女丸の家?」
「そうだ、あのままうちに帰ってきた。救急に行こうか迷ったが、いつもおまえがうちに来たときに世話になる医者が祭りに来ていて車で追いかけてくれたんでな。・・・熱中症だそうだ。」
ふぅと溜息を付いた美女丸が、次の瞬間鬼の形相になった。
「馬鹿ってなんだよ、だと?・・・馬鹿が不服なら阿呆でも間抜けでもかまわんぞ!この暑いのに水分も持たずあんなとこにいる奴がいるか!」
そう言い切ったあと、あたしが寝かされている布団の横にあった水差しの水をぐいっと呷った。
あたしの頭を大きな手で持ち上げ支え、覆いかぶさり、・・・あたしの唇に自身の唇を重ねてきた。
半開きだった口から美女丸の舌が入り込み、冷たい水が流れ込んでくる。
思わずこくん、と飲み込んだあたしの口の中を少しの間蹂躙したあと、美女丸の唇が離れた。
じっとみつめるあたしの視線を受けて、美女丸はくっと何かに耐えかねたような表情をした。


「・・・心配させるな。」
「ごめん・・・。」
そう呟くあたしに、美女丸は触れるだけの口付けをしてきた。
こんなに優しい口付けを受けたのは初めてだった。




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