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莫迦な人、眩しい人 (鈴影×ユメミ)

さらさらとしたシーツの狭間、薄闇に長い緑黒髪が紛れていく。

古傷があちらこちらにうっすらと残るけれども、強固な囲いのように下ろされた両腕の間で、あたしはじっと鈴影さんを見てしまう。


「あなたの腕の中は、いつも気持ちいいの。どうしてかしら。」


ふっと唇を軽く上げた鈴影さんは、あたしの目の端に口付け、大きな手であたしの腰を撫で、お互いに何も身に着けていない身体を愛おしげに見つめる。


「お互いの体温を分け合えるから。」


そう囁いた鈴影さんは、あたしの下唇をそっと舐め、ふっと息を吐いたその隙をついて、少し厚くて引き締まった唇を重ねてきた。
軽く触れたあと、舌を差し入れられ絡め取られる。一度少し緩めに開いた瞬間に息継ぎをし、また深くお互いの口付けに酔っていく。


「・・何を笑っている?」

あたしの鎖骨へとその唇を移し、その体躯をあたしの全身で受け止めて息苦しくそして熱くなっていく最中に、少し微笑んだのに気付いた鈴影さんが問いかけてくる。

「あなたの腕の中にいるのがね、不思議だと思わなくなったのがおかしいのよ。」


幾度となく、こうしてお互いの熱を確かめ合うようになって。
最初の頃は、戸惑いばかりだった。


「でもね、あなたがあたしに触れるのを、躊躇いなく出来るようになってくれたから・・・かも、しれないわ。」


鎖骨にきつく喰いつく気配に、知らずにびくっとしてしまう。


「おまえには・・敵わないよ。」


静かな口調に小さな熱い吐息が絡み、明確な意思を伴って弄る彼に、あたしは翻弄され、思い切り喉を仰け反らせてしまう。




あたしにとって、とても眩しいひと。

愛しい、・・・莫迦なひと。






Fin


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逢いたい 番外編 ~みんな愛のせいね~ (シャルル×マリナ)

「そんなに警戒しなくても、もう不意打ちで落としたりしないから安心していいよ。」
どう見ても、あからさま過ぎるあたしの態度に、隣を歩くミシェルは苦笑して言う。

「今までのあんたの仕打ちが、あたしをこうさせるの解ってて言ってるのよね、それ。」
「もちろん。」

きらきら輝くそんな笑顔で言うな、バカミシェル!
後の仕返しが怖いから、心の中での叫びにするけどね・・・。
いきなり落ちたり飛ばされたりされるのは、もう勘弁して欲しいのよ。本当に。

「ミシェルはあの絡繰り屋敷が好きなの?」
まだ少しぎこちない動きのあたしにくすくす微笑みながら、ミシェルは大きな手であたしの髪をくしゃりとかき回す。
「ああ、日本の精巧な技術力の高さが如実に表れたものだからね。すっかり感化されたクレールにあそこを任せているが、彼のキャラクターも面白いしね。」

クレールさんというのは、あの絡繰り屋敷を管理している人で、香里奈さんの夫でイーサンのお父さんのこと。元々絡繰りを生業としていた香里奈さんの実家に単身乗り込んで弟子入りして、棟梁娘の香里奈さんに惚れこんでしつこいほどのねちっこさで技術と香里奈さんを手に入れたという、ある意味トリッキーな人だ。綺麗な発音で日本語を話すクレールさんは、普段は普通だけれども知らぬ間に細かい絡繰りを屋敷に施しているらしい。



「・・・第一なんで、ミシェルはあたしをあそこに行かせたの?それにどうして、今日香里奈さんに会いに行くの付いてきてくれるの?」
あたしがそう聞くと、道行きにきらきら輝く木漏れ日の光を受けて、さらに美しく照らされるミシェルは静かな笑顔になっていた。

「今も今後も、君の行動はどうしても管理されがちになる。シャルルの傍にいるということは制約も出てくることがあるだろう。元々君はオレが連れてきてしまったから、君の憂いを取り除けるようにしていくべきだと思ってね。」
いつにないしおらしい台詞に少し驚いたけれど、微妙に答えになっていないような気がする。

「あそこに行って、気晴らしになっただろ?ショック療法さ。」
う、うーん・・・。香里奈さんたちと知りあえたのは良かったけど、落ちたり飛ばされたり水浸しが気晴らしなの?

「君にとって愛とは『食べ物を分け合うこと』なんだろ?」
なんでそんなことミシェルが知ってるのよー!?
思わず顔が赤らむあたしを、ミシェルは面白そうに見下ろしてくる。

「オレにとっては、愛とは『関心を持ち気にしていくこと』かな。その対象はとても狭いけどね。それでいいし、それしか出来ない。」

ミシェルがそう言い切れるようになるまで、どういう思いをしてきたのか。
あたしには窺い知れぬことだろうけれど、それでも話してくれるのはあたしのことを認めてくれているからなのかな。

「きみは、面白い子だね。シャルルのファムファタルが、マリナで良かったよ。」
・・・・・褒めてるのかどうかとっても微妙だけど、本心なのはわかる。
ミシェルが本音を素直に聞かせてくれることがあまりないので、これはこれで良しとしよう、うん。


「とは言っても、オレもきみに何も言わずにあそこに向かわせたのは少し良心が咎める。もう少ししたらシャルルがイタリアのサルデーニャへ監察医の仕事で行くから、きみも付いていったらいい。たまにはきみにも外の空気を感じた方がいいと思う。手配はしてあるし、きみの仕事のネタになることがあるよ。」
えっ、まんがのネタ!
それはぜひとも行きたいわ!

あたしはミシェルと香里奈さんと散々おしゃべりしたあと、意気揚々とシャルルの所へ向かった。
あたしの話を聞いて始めいい顔をしなかったシャルルも、何か気が変わったのかとりあえず一緒に連れて行ってくれた。



まさかそれが、「カース・マルツゥ」というサルデーニャの蛆の入ったチーズを闇市で買えるように手配されていることとは思わなかった・・・。
これ、いろいろな危険性があるかもしれないので、イタリアで発売禁止にされてるそうだ。
確かに、まんがのネタになって紀行まんが描いたら評判良かったみたいだけどさ・・・。
この蛆虫、触ると15センチくらい飛び上がるので目を保護する眼鏡まで用意されてた・・・。
さすがに少ししか食べれなかったわぁ。
なぜシャルルが止めなかったのかというと、あたしがお腹壊さないか興味があったんだそうだ。それでも現地のアルコール度の高い赤ワインをたらふく飲ませてくれたけどさ。消毒を兼ねて?


・・・・・・あんたたち兄弟の愛の定義ってなんなのよー!!




Fin


在りし日の君に (響谷兄妹)

「ね、お兄ちゃま、どこに行くの?」
「薫、兄さんの秘密の場所に連れていってあげる。だからもう少し歩けるね?」
2人だけで行きたい場所なので車は出してもらわなかったため、薫は戸惑っていたようだけれど、秘密の場所という言葉に嬉しそうににっこりと笑って僕と繋いだ手をぎゅっと握りしめてきた。


7歳の僕の妹、薫。
可愛い僕の妹。
薫が喜んでくれるなら、僕はなんでもしてしまうかもしれない。


山手の奥の小高い丘が目当ての場所だ。
「わぁっ、きれい・・・。桜のお花がいっぱいだね!」
この丘には2本の大きな桜があり、静かな風に吹かれて桜の花びらが大きく舞っている。
「この間偶然見つけたんだ。この時間帯はあまり人も来ないし、街が一望出来るだろう。」
持ってきた籐籠からシートを取り出し下に敷き、サンドイッチと薫お気に入りの林檎ジュースを取り出すと、薫の顔が笑顔でいっぱいになった。
「これ、もしかしてお兄ちゃまの手作り?だってサキさんが入れるきゅうりが入ってないよ?」
サンドイッチの中身を見て僕を見上げる薫の瞳はきらきらしていて、肩下にかかる柔らかい癖髪に桜の花びらが付いていく。
僕は薫の膝にブランケットを載せながら、クスクスと笑う。
「サキさんを悲しませたくなくて苦手なきゅうりを食べている薫を知っているからね、僕が作ってみたんだ。さ、お食べ。」
それなりに歩いたのでお腹を空かせたのだろう薫は、ぱくぱくとサンドイッチを食べていく。
「おいしい、お兄ちゃまも一緒に食べようよ。はい、あーんして。」
薫が僕の口元に持ってきたサンドイッチを一口齧り、そのまま薫の手からサンドイッチを受け取る。
「ね、また来ようね!次はね、マカロンも持ってこようよ。甘いのも食べたいから。」
並んで座る僕の足元にもブランケットを広げてきた薫が、両手を顔の前で合わせ眼下に広がる街並みを見ながら一生懸命話しかけてくる。
ひらひらと桜の花びらが広がる場所で、僕らは静かに佇んでいた。






寒く冷える監獄の中、目を覚ますとしんしんとした空気に満ち溢れている。
自分の犯した罪が頭から離れることは決してない。
ただ、夢で見る昔の思い出がかいま見えたとき、胸に暖かい灯りがほのかに灯る。
薫のことを思うとき、僕が僕であると実感する。
在りし日の君を想うとき、僕は僕であると思えるんだ。






Fin




Category: 響谷兄妹

2014 一美クンBD創作 「林檎は誰のもの」

大学のテニスの遠征とはいえ、何日かぶりに自分の住んでいる町に帰ってくると、やっぱりほっとするものだ。

クラブの仲間と別れたオレは、そのままリンゴの所へ向かう。
久しぶりに会える日だが、リンゴは今保育園で手伝いをしている。

何でも、リンゴが通っていた保育園の園長に先日偶然会い、園で春祭りを行うはずが先生の一人がケガで動けないと聞いたリンゴが手伝いを申し出たらしい。
申し訳なさそうに謝るリンゴに、迎えに行くと電話で言ったら嬉しそうに返事してくれた。



ああ、多分ここだな。リンゴが言っていた保育園というのは。
リンゴが園に話を通してくれていたので、そのまま門を潜り保育スペースのある部屋の外からそっと窺うと、リンゴが覚えたてだろうフリキュアのダンスを踊っている。
終わった後、息切れしながらも子どもたちの相手をするリンゴは可愛くて、見ていて飽きない。

おやつの時間なのだろう、他の先生が手作りのケーキとジュースを用意している。
ショートケーキ、チョコケーキ、ああ、アップルパイもある。全部見慣れたケーキだ。
よくリンゴが作ってくれるケーキだからだ。

声を掛けようか逡巡していると、背の高い二十代くらいの男がリンゴの傍に寄り、あろうことか顔を近づけリンゴの髪の匂いを確かめている。
思わぬ激情が一瞬爆発しそうになるが、子どもがいる為抑え込む。

そんなオレに気付いたリンゴは、ほわぁっと嬉しそうな顔をしてこちらに向かってきた。
「一美クン、お帰りなさい!疲れてるのに迎えに来てくれてありがとう。」
扉を開けてにこにこと笑うリンゴを見ると、しょうがないなと思わず溜息をついてしまう。

「ただいま。ダンス見せてもらったぜ・・。少しヨタヨタしてたな。」
からかい混じりにオレが言うと、いつものごとくリンゴは赤くなった。
「で、でもね!ホケモンのダンスは男の子に褒められたのよ。そっちも見てくれてたら良かったのに~。」

悔しがるリンゴの後ろから、年配の女性の声がかかる。
「和美ちゃん、ありがとう。もう春祭りも終わりだから、彼氏とお帰りなさいな。今日は本当にありがとうね。」
「あ、でも・・・。後片付けとか・・。」
「もうほとんど和美ちゃんが片づけてくれてるから、大丈夫よ。はい、これ持ってね。」
園長先生だろう女性が、紙バッグをリンゴに渡してリンゴの頭を撫でる。
「いい子に育ったわね、じゃあ、またね。」
くすぐったそうな表情で、リンゴは「はい。」と答えていた。




「・・・なんか一美クン、変じゃない?ちょっと・・・ムスッとしてる?」
いつもと変わらぬようにしているつもりだけど、リンゴは気付いて問いかけてきた。
下からそっと見上げるように問いかけるリンゴを物陰に連れていき、オレはさっきの男がやっていたように顔を近づけリンゴの髪にそっと唇を付ける。

「ちょっ・・と、一美っ・・。」
「・・・甘い匂いがする。」

驚いて身動ぎするリンゴの腰に両手を回した。

「一美クンに焼き立て食べて欲しかったから・・・。このアップルパイ、保育園で焼かせてもらったの。他のケーキは、作ってたの持っていってたんだけど、そしたら、皆からケーキの匂いがするって言われちゃって。」
「・・・だからあの男もおまえに近づいてたわけ?」
「副園長先生、甘いもの好きだから『いい匂いだね』って言われたんだけど、え、一美クン・・?」
「隙あり過ぎ・・。無防備になったらダメだ。」
「う、気を付けます・・・。だから、ね、もう行こう?誰か来たら恥ずかしいよ。」
「そうだな、焼き立て食べたいし。でも、その前に・・。」
赤い頬を手で包み、そっとキスをする。
角度を変えて、何度も。






このリンゴは、オレのもの。
甘い林檎は、オレのもの。







Fin



Category: 2014 BD創作

2014 光坂クンBD創作 「SWEET」

「あ、光坂クン!ちょうどいい所で会ったわ、一緒に行きましょう!」
パタパタと軽やかに音をたて僕に追いついたユメミが軽く息切れしている。

「でも、なんか悪いよね。わざわざロッジで僕の誕生日を祝ってくれるなんて・・・。」
肩を並んで一緒に歩き出したユメミの大荷物の一部を受け取って、僕は嘆息した。

「お祝い事はたくさんあったほうが楽しいもの!ヒロシや冷泉寺さん、鈴影さんも賛成してくれたし。光坂クンが生まれた日をお祝いするの嬉しいわ。」

屈託のない笑顔で癖髪を揺らして話すユメミはキラキラしていて、僕は目のやり場に少し困ってしまう。
彼女が僕に振り向いてくれる日がくるかなんてわからないけれど、それでも想うことは止められないんだ。

物思いを吹っ切るように、僕は手元の荷物に目をやる。
「何をたくさん持っているの?」
「光坂クンが持ってるのはケーキで、あたしが持ってるのは本命のお料理なの。」
「本命の料理って何?」
「先に行ってるヒロシに持たせた大量のお料理は目晦ましで、ヒロシがつまみ食いして落ち着いた頃に出すお料理がこれ。主役放ったらかしですぐ食べきっちゃうじゃない?やっぱり皆にもね、食べて欲しいもの。」
「ぶぶっ、さすがユメミ。良く高天さんの事わかってるよね。お気遣いありがとう。」
「そのケーキもね、すごく気合い入っちゃったのよぉ。スポンジをピンクにしちゃった・・。双子がらみのPTAやら子ども会の役員の引き継ぎやらなんやらで、フラストレーション溜まってたみたいでつい・・・。ごめんねぇ。」
「え、いいじゃない。今日は女の子を祝う日でもあるんだし。気合いの入ったユメミのケーキ早く食べたいよ。」
僕がケーキの箱を抱え上げると、ホッとしたようにユメミが笑う。

「じゃ、早く行きましょ。お料理が冷めちゃわないうちにね!」
「その前にね、荷物交換。そっちの方が重いでしょ。嵩はこっちの方があるけどさ。」
「ありがと、やっぱり男の子よね。なんか筋力もついたみたい、このあたりとか。」
そう言って、ユメミが荷物交換する不意を衝いて僕の腕に触れてくる。

きっとユメミはわからないんだろうな。
自分の行いが、どれだけ僕を鼓舞しているのか。
僕はいつまでも猫のままじゃない、いつかそれよりも凶暴なものになってしまうかもしれない。
そんな衝動を僕は全霊で押さえていくけれども。
ユメミを僕の行いで傷つけてしまうのは、自分にとって万死に値することだから。

「ユメミ、ちょっとセクハラっぽいよ。はいはい、離して。」
「やだぁ、からかわないでよね!そんなこと言うと主役だって食べさせてあげないんだから!」
せっかく褒めたのに、と呟き先に歩き出した君に追いついて。

共に行くのは、皆のいる場所。
辛いこと、悲しいこともあるけれど。
それでも君と過ごせる、甘やかなところなんだ。




Fin

Category: 2014 BD創作

逢いたい 4 (シャルル×マリナ) 最終話

赤らんだ頬をごしごし擦りつつさっきの部屋に戻ると、扉を開けた途端、イーサンが飛びついてきた。
香里奈さんでもあたしでも相手は誰でもいいようで、とにかく必死に無言でくっ付いてくる。
おーい、さっきまでの威勢はどうした、ツンが無くなってデレのみになったのか!


部屋に入った時よりもさらに温度が下がった気がして、あたしが顔を上げるのと香里奈さんがイーサンをあたしから引き剥がすのが同時だった。
「やれやれ、憧れの人と対峙して萎縮した上に地雷踏んでどうするの。・・・さ、マリナさん、シャルル様とお目当ての部屋にお向いなさいな。こいつの事は心配ないから。」
またもや必死に香里奈さんに縋り付くイーサンに、あたしは肩を叩いて慰めてみた。
「あんたはあたしのこと気に入らないかもしれないけどさ、あたしはあんたとまた話してみたいわ!良かったらまたお茶しましょ、またね!」
「うっせーよ!そこまで言うなら迎え撃ちしてやる、また来やがれ!」
部屋に入ってきてからやっと口を開いたイーサンの台詞はやっぱりツンデレで、あたしはつい吹き出してしまった。




「ちょっとシャルル、あんたスタスタ先行かないでよ、何怒ってんの?」
まだお尻痛いのに、小走りなんてさせないでよ!ハアハアゼイゼイ。うっ、息切れしそう。
「・・・どうして君はオレの前で堂々と男と抱きあってるのか、オレはぜひ聞きたいね。返答次第によっては容赦しないよ。」
氷のような冷たい視線と声音で少し振り向きそう言ったシャルルに、あたしはえ?と困惑してしまった。
「男って、あのしがみ付いてきたイーサン?勢い良くがっちり来たから避ける暇なくて。まぁ憧れのあんたが取りつく島もないのが気の毒だったのもあるけどさ。」
「返答としては70点かな・・。」
ボソッと呟いたシャルルにあたしの腰が急に引き寄せられた瞬間、またもやあたしの足が着くはずだったはずの床がパカッ!
思わずその勢いのまま、シャルルにしがみ付くあたしに、彼は淡々と告げた。
「及第点なので助けてやる。・・・隙を見せるな、他の男に同情するな。」
「わかった、努力はするからもう落ちるのは勘弁よぉっ!」
「マリナ、歩けないだろ、足を引っ掛けるな!」
昔流行った人形のように離れないあたしを叱りつけながら、それでもシャルルはその部屋へ連れていってくれた。





「これなのね、ミシェルが見せたかった絵は・・・。」
きっと一番いいコンディションで絵画が保存出来るであろうその部屋に、ひっそりとその絵だけ飾られていた。
画面いっぱいに星空が描かれた絵。
瞬く星がわかるような、不思議と見入ってしまう絵だった。

「この冬の大三角の上を見ていくと、カストルとポルックスが見える。・・・ふたご座の目印になる星だ。」

あたしは隣に立つシャルルの腕の服の裾をきゅっと握り、そっと答えた。
「そうなのね・・。」
「・・・ママンが何を想ってこれを描いたのか、今では確かめようがないけれど。きっと描かずにはいられなかったんだろうとだけは思う。君も絵を描くから解るだろう?」
「そうね。これからまた何回も見に来たくなる絵だわ。ねぇ、シャルル・・。」

続きを静かに促すシャルルの視線に、あたしはシャルルを見上げて言った。
「さっきあたしが言ったこと、どう思った・・?」
ふっと雰囲気が柔らかくなったシャルルが、あたしの頭をくしゃっと撫でる。
「上出来だよ。」


オレを信じると言い切ってくれたこと。
どんな妨害や変わりゆく事柄があっても、前を見ていくと言ってくれたこと。
オレも応えたいよ。
こんなやっかいな男の傍にいることを潔しとしてくれるのだから。


「オレを信じていてくれれば、どうとでもなるさ。」



「・・・ででもあたし、今はしょうがないけど軟禁状態とかやだからねっ。仕事もまだまだしたいし!その為にはまずフランス語頑張るわ、取材に行けないもの!」
「結婚するまでは口は出さないさ。護衛は付けるけれども。」
「けけけ結婚・・・。とととと当主・・なんとかになるの?だったら行儀作法ビシバシお稽古よね・・・。中々品格って付かないようにも思うけど・・・。」
「またそれは追々ね。それこそアルディの至宝が3人もいるんだ。マリナがマリナでいられないようなままでいさせるつもりもない、安心していい。」
「うっ、解ったわ。自分が決めたことだから・・・やるわよ!」
思わずぐっと両手を握りしめるあたしの手を優しく包み、天使のような微笑みを浮かべたシャルルがあたしにキスをした。
あたしの手を包んでいたシャルルの手が、あたしの腰をぐっと抱き込み、さらにキスが深くなる。
角度を変え、離れてはまた触れ合い、その繰り返しにあたしはとろんとなってしまった。


「いつか・・・。」
シャルルがあたしを見つめ、そっと囁く。
「マリナもこんな絵を描いてくれ。次の世代に伝わる、何かが感じられる絵を。」
「うん・・・。」



きっといつか描くわ、シャルル。
そのときは2人一緒に逢いにいくのよ。
そしてわいわいやりましょうよ、せっかく一緒にいるのだから。






Fin