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このままでいさせて (銀バラ)

今日は秋のイベント、文化祭。
うちのクラスは喫茶店なんだけど、あたしの当番が終わったのであるところに向かってるの。
「あれ、ユメミ?どこに行くの?」
下級生の教室で鈴影さんと話し込んでいた光坂クンに声を掛けられる。
「あのね、中学の部活でお世話になった先輩のクラスの模擬店に行くの。絶対来いって釘刺されちゃって。光坂クンと鈴影さんはどうしてここにいるの?」
「オレはこれから用事が出来て帰るんだが、荷物を取りに行く途中で光坂と会って、少し話していたんだ。」
さらさらの長い髪をそっと肩から払い、薄く微笑んであたしを見つめる鈴影さんに、ついあたしはときめいてしまう。
ダメよ、今ドキッとしたら光坂クンが猫になっちゃうわ!平常心、平常心。
「ボクはこれから色々見て回ろうとして教室出たらレオンさんに会ったから挨拶してたんだ。ね、ボクもその先輩の教室に付いて行ってもいい?」
そう言ってちらっとこちらを見る光坂クンには、なんだか母性本能が刺激されちゃうのよね。
「わ、嬉しい!実はその先輩、根はいい人なんだけど、ちょっとクセがあるのよ。一緒に来てくれると心強いわ。」
あたしが思わず手を合わせて喜ぶと、鈴影さんが苦笑しながらあたしの頭をくしゃっと撫でる。
「オレも向かう方向が一緒だから付き合うよ。」
「そうだね。ユメミ、行こう!」
そうしてあたしたちは、文化祭のパンフを見ながら歩きだしたのだった。




「ここ、お化け屋敷になってるんだね・・・。」
教室の外の壁を、まるで遊園地のお化け屋敷風にアレンジした力作を見て光坂クンが呟く。
「これぐらいなら大丈夫だろうが、こういう場所は悪いものが寄ってきやすいんだ。特にユメミには月光のピアスが付いているから、気を付けておくように。」
う、そうなんだ!
でも、あたしだって普段はこういうところ行かないわよ。だって怖いもの!
「山内先輩・・・、あ、今日誘ってくれた人なんですけど、ヒロシ共々中学のときお世話になってて。ヒロシは今日なかなか抜けれないみたいだからあたしが先に行くっていうので拗ねてましたけど。」
「高天さん、演劇で悪者役だって嘆いてたけど、見てきたらノリノリだったよ。」
そう言いながら3人で扉を開けたら、真っ黒な空間から急に不気味なお面が何枚もあたしに向かってぶら下がってきて、思わずあたしはドキッ!
「うわっ・・・!」
小さな声が傍で聞こえたと思ったら、光坂クンが毛並ツヤツヤのエメラルド色の猫になっていた。
「ごめん、ボク出口で待ってるから、服持って来てっ!」
猫になった光坂クンがあたしの肩にぴょんと飛び乗り、耳元でそう囁くとさーーーっと走って行ってしまった。
「ユメミは知ってて来たみたいだから大丈夫かと思ったんだが、入ってすぐ変身してしまうとは光坂も思わなかっただろうな。ここが暗い場所だったのは良かったが。」
落ち着いて話す鈴影さんの声を聞きながら、あたしはしゅんとして光坂クンの服を拾う。
「ここに来ることに気が行っちゃって、ドキッとすると危ないのに、光坂クンに悪い事しちゃった・・・。」
「光坂なら大丈夫だよ。さ、行こうか。」
そう言って鈴影さんが、あたしの手をきゅっと握って歩き出す。
ほんの少し前を歩く鈴影さんの大きな背中を見て、あたしは目を細めてしまう。




ほんの少しでいいから。
鈴影さんの存在を、近くに感じさせてください。
少しだけ、このままでいさせて。




・・・・・このとき、あたしは切ない気持ちでいっぱいだったのに。
コンニャクが顔に投げつけられて来たり、足をひっかれられそうになったり、その他諸々、子どもの悪戯か!と思うような仕掛けに、鈴影さんが呆れたように溜息を吐くと、ついにはあたしの肩を抱いて歩調が速くなってしまった。


山内先輩ぃぃぃっ、面白がって追いかけてきてますね!
そうよ、先輩はそ・う・い・うことばっかりするのが好きな人だったんですよねっ!!


・・・でも、あたしだって負けていませんよ?


出口で待ってた猫の光坂クンを抱き上げ、あたしはこそっと囁く。
「あのね、後ろの暗闇の中で面白そうに笑ってるあの人、ちょっと追いかけてあげてくれない?」
一部始終を見てたらしい光坂クンは、ペロッとあたしの頬を舐めてから床に降りたった。


「ぎゃあっっ!ね、猫ーーーーー!!?」

ガタガタと大暴れしたあと、逃げ惑う山内先輩の後ろ姿が見えた。


「彼は猫が苦手なんだね。」

やれやれ、という風情の鈴影さんが光坂クンに追いかけられて去って行った山内先輩を見る。

「山内先輩は面白がってばかりだから、こういうお灸が必要なんです!光坂クンが帰ってきたらお礼にたこ焼き奢ってあげよう!」
ちょうど通りかかった教室の模擬店のたこ焼きがあったので、あたしはそこで光坂クンが帰ってくるのを待つことにした。
「じゃあ、オレは行くよ。帰りは光坂か冷泉寺と帰るように、高天は遅くなるようだからね。」
軽く片手を挙げて去っていく鈴影さんの背中を見て、あたしはさっきのことを思い出してしまう。



・・・出来ることならもう一度。

また、鈴影さんの存在を近くに感じることが出来ますように。




そう思って、あたしはほっと息を吐いた。




Fin

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2014 ユメミBD創作 「遣らずの雨」

もう、先生ったらひどいわっ!図書室の書庫の整理を急に頼むなんて・・・。
でも、最近双子たちの怪我が絶えなくって病院通いで遅刻気味ななうえ、元々図書委員だからしょうがないといえばそうなんだけどね。
それに今日は習い事の英語の催しパーティーで双子たちは夜になってからお迎えに行けばいいから、日頃不義理してる図書の仕事を黙々とこなそうっと・・・。
「なんだぁユメミ、今日は部活休みだからとっとと送ろうと思ってたのに、図書室行くのかよ。」
ヒロシが呆れたようにあたしの元にやってくる。
月光のピアスを付けているあたしの心臓を目当てに色々なものが寄ってきやすいので、誰かが付いていてくれることが多いの。
「あのねヒロシ、悪いんだけどスペアキーでうちに入って英語教室にスイートポテトとパンプキンパイを持って行ってあげてくれない?近所の田中さんが作ってる畑で出来たサツマイモとかぼちゃをいっぱいもらったから作ったの。久しぶりに英語教室の伊藤先生もヒロシに会いたいって言ってたし、たくさん作ったからあちらで食べていったらどう?」
あたしが両手を合わせて頼むと、ヒロシはボリボリと頭を掻いた。
「めんどうくせぇけど、おまえのお菓子絶品だしな。いいよ、行ってやるよ。どうせ伊藤先生に会ったらなかなか帰れねえから、双子たちもオレが連れて帰ってやる。」
「きゃあ、ヒロシ大明神様、ありがと!」
「胸焼けするぐらい食ってやるからな!」
うん、多分そうなっても大丈夫なくらい作ってある・・・。
それでも夕食も完食するであろうヒロシに、たらっと背中に汗が流れてしまった。


どことなく埃が舞い、本がたくさんあるからであろう独特の空気が漂う。
そこかしこに積まれた本を整理して本棚に仕舞う作業は嫌いじゃない。
だけどあたし、本がたくさんあるところ行くとお腹痛くなるのよね・・・。
インクの匂いでなるのかも、と聞いたことあるけど、ゆっくり本見てる途中だとイヤになっちゃう。

「作業は進んでるかい、ユメミ?」
しっとりとした落ち着いた声が背中にかかり、振り返ると穏やかに微笑む鈴影さんがいた。
「えっ、鈴影さんがなぜここに・・・?」
「冷泉寺は空手試合の打ち合わせ、光坂は水泳の強化合宿の説明会で先に帰ってしまってね。高天もユメミが帰してしまったし、オレは見たい本があったからここに来た。終わったら送っていくよ。」
「あと少しで終わります。ごめんなさい、鈴影さん。迷惑ばかりかけちゃって・・・。」
「君を守る、と約束したのはオレだ。気にすることはない。」
クッと端正な頬を引き締めて微笑む鈴影さんに、あたしはドキドキしてしまう。
うっ、良かった、変身しちゃう3人が傍にいなくて。
変身するのってすごく疲れるらしいから、なるべくならさせてたくないの。
「もうこれで終わりですから、待っててくださいね!」
パタパタと奥の書庫に本を抱えて走るあたしの背中に、鈴影さんの視線が当たったような気がしたけど気のせいかな?
そう思ったとき、ふと眩暈がした。
でも倒れることはなく、自分が自分でなくなったようなぼんやりとした感覚になる。
奥の書庫、それよりさらに奥があるわけじゃないのに、歪んだ闇があるように見える。
ふらふらとその暗闇に足が向かう感覚がとても怖い。
・・・イヤ、行きたくないっ!

「ユメミッ!」

後ろからぐいっと腰を攫われ、大きな体躯に体ごと包まれる。
その暖かさに正気に戻ったあたしは、そのまま気を失ってしまった。



目を覚ますと、ツンとした消毒のにおいがして、自分がベッドに寝かされているのがわかった。
ああここ、保健室なのね・・・。
「目が覚めたか。もう何も心配することはないよ。」
大きな手であたしの頬に手をやる鈴影さんの黎明な視線に、ほっと安心する。
「・・・なんだか急に体が変になって。」
「今まで学校にも所々怪しい気配を感じる所があったから全部処理してきたんだが、目を盗んでまたやってきたようだ。急に気配が濃くなったと思ったら案の定だった。ユメミの心臓の血を狙ってやってくるものがこれからもあるだろうがオレが守る。」


だからユメミは、自由にしてていいんだよ。
いつもそうやって鈴影さんは告げてくれるけれど。
こんなあたしでも、傍にいていいですか。


「車を呼んである。さ、帰るよ。」
足元が心もとないあたしをそっと抱き上げ、玄関に向かっていく。
外に出ると、雨が降って来ていた。

「・・・遣らずの雨。」

「何か言ったか、ユメミ?」
小さな小さな声は、鈴影さんに聞こえなかったよう。
「いいえ、なんでもありません・・・。」


あなたともう少し一緒にいたいと思う心が、あなたを帰したくなくて雨が降り出したと少しだけ思わせてくださいね。



Fin



Category: 2014 BD創作

雪代に映る月 (シャルル×マリナ)

アルディ家のコックの話
「あ、またマリナさんこちらにいらしたのですか?つまみ食いばかりしているとシャルル様のお怒りを買ってしまいますよ?ああこれは新作のケーキを試して作ってみたのですが…。しょうがないですね、少しだけですよ?
美味しいですか、それは良かったです。・・・もうその辺りでお止め下さい、夕食後のデザートなしでよろしいのですか?さ、このキャラメルを差し上げましょうね。
シャルル様もマリナさんがこちらにいらしてから、よく食事を召しあがってくださるようになりました。以前はお忙しさにかまけてお酒で誤魔化したりなどなさっていて、陰ながら心配しておりました。
これからもマリナさんがお傍にいて、シャルル様にちゃんと食事を召しあがるようにお伝えくださいね?こちらでのつまみ食いは内緒にしてあげますから。」

アルディ家のメイドの話
「ええ、こちらはシャルル様のお好きなバラです。・・・は、マリナさんが持って行ってくださるのですか?では申し訳ありませんが、シャルル様の書斎の窓辺に置いていただけますか。
このキャンディ、美味しくて最近のお気に入りなので、お礼にマリナさんにも差し上げますね。シャルル様には内緒ですよ?
シャルル様がマリナさんとお過ごしになるようになって、このお屋敷の空気が大分柔らかくなったように思います。
以前はどことなく氷のように冷え冷えとしたところがありまして、私たちは落ち着かなくお仕事させていただいていたこともございます。
・・・詮なきことを申しました、お忘れくださいませ。
ああでもマリナさん、シャルル様の寝室のベッドメイクは私たちの仕事ですので、乱れていてもお気になさらずそのままにしておいてくださいませ。何も思っておりませんので。
きゃあ、マリナさん、壁に打ったお顔大丈夫ですか!?あら、打った所以外もお顔が赤いですね?」

アルディ家の庭師の話
「ありゃ、またこっちに来たのかい?土で汚れちまっても知らないよ?ああそうだよ、ここは今造園しているんだ。シャルル様の指示でね。
なんでもここに東屋も造って、一緒にゆっくり過ごしたいお人がいるそうだ。絵を描く人らしいから、一番この庭が良く見える場所を与えてさしあげたいんだろうよ。
ところでお嬢ちゃん、これおじさんの取って置きのクッキーなんだけど食うかい?なんだかあんた見てるとリスを思い出すねぇ…。あ、そのパンパンのポケットのせいかねぇ。」

アルディ家のSPの話
「・・・シャルル様がお戻りになられたようですよ。」


「シャルル、お出迎え出来なくてごめっ・・・んっ!」
「・・・ただいま、マリナ。口の中が甘い味がするけど・・。またつまみ食いか?」
「違うわよ!い、いきなりキスなんてしないでよ、びっくりするじゃないの?」
「君から甘い匂いがしたからね。一番わかりやすい方法だろう?・・・なんだ、このポケットは・・。」
「ぎゃーっ、シャルル、取っちゃダメだからねっ!これはあたしの頬袋なんだから!」
「君はいつの間にげっ歯類になったんだ、オレはこんな大きなリスはいらん!」
「何よっそんなこと言うなら耳元でボリボリ木の実でも齧ってやるーっ。」
「それより君は、先にオレにしないといけないことがあるのではないの?」
ぐっと詰まったあたしは、渋々シャルルの頬に唇を寄せた。
「・・・おかえりなさい、シャルル。」
同じようにシャルルの唇を頬に感じ、静かな声が耳元に響く。
「ただいま、マリナ。」
お互いが帰ってきたときに、顔を負わせ向かい合うこと。
あたしたちが一緒にいるようになって、約束したこと。

こうして一緒に過ごすまでのシャルルの世界がどうだったかは、微かに伝え聞くことでしかわからない。
でも、彼の何かが柔らかくなったことはわかるわ。
「マリナが傍にいると、調子が狂うよ。色々な意味で。」
・・・そりゃあ悪うございました。
「でも、悪くないね。」


アルディ家のある秘書の話
「やっと、雪解け水に映る月を見たような心地ですわ。それは、・・・マリナさんにしか出来ないことなのです。」



Fin



夢語り (和矢×マリナ)

けたたましい喧噪の中、噴き上がる砂埃に思わず目を擦る。
その瞬間、大きな体躯に羽交い絞めされるように抱きしめられ、覆いかぶされる。
馴染んだ匂い、感じる体温で抱きしめてきたのが和矢だと解る。
大きな肩に手を回すと、ぬるっとしたものが手に触れた。
それがあたしを庇ったせいで和矢が受けた傷から出たものだと解ったとき、あたしは悲鳴を上げた。
「・・・いやぁっ・・!」



「・・・という夢をね、見たのよねぇ。」
「ふーん。」
「あ、ははは、ご、ごめんね?」
「どういたしまして。・・・魘されているからと様子を見ようとしたら、思い切り殴られ、おまけに夢の中でもそんな扱いとはね。」
少し、いや結構、腫れた痣が左頬に残る和矢は、憮然としていた。
横で寝ていたあたしを心配してくれたのに、面目ないです・・・。
「はぁ、でも・・・リアルだったなぁ・・。」
瀬木さんの事件のときの、ガス爆発のことがまだ心に残ってるのかしら。
「・・・オレも、昔のことで夢を見るときはあるよ。でも、一貫性がなくて色々な場面が混ざって混沌としてるし、目が覚めたらそういう夢だった、というのは覚えているけど詳しくは忘れていたりするんだ。」
和矢がこうやって、自分の内面のことをポツポツと話してくれるようになったのは、一緒にいるようになって随分後になってからだった。
「いつだって、あんたはいざというときあたしを庇ってくれたわよね。さっき見た夢みたいな状況にもしなったら、きっと同じようにしてくれるのよね・・・。」
そっとお腹に触れながら言うあたしに、和矢は後ろから抱きこむようにして大きな手を重ねてきた。
「マリナは今、初期の時期だから情緒不安定になってそんな夢を見たんじゃないかな・・・。それにさ、勝手に殺すなよ。夢の中とはいえひどいよな。」

何があっても、おまえとこの子は守るよ。


聞こえるか聞こえないかぐらいの細やかな声で和矢はそういうと、あたしの瞼に軽くキスをする。

「もうこれで、悪い夢は見ない。」

もう一度瞼にキスされ、そっと目を開けると、黒いくせ髪の下の瞳が甘やかに微笑んでいた。
ああ、そっか。
あたし、和矢の笑顔を見るのが大好きなのよ。
今までにない経験に気持ちが揺らいで、これからどうなっていくのか不安になってあんな夢みちゃったのかも。

「和矢・・・、ありがとう。」
そう言ってあたしが和矢の頬にキスをすると、ぎゅっと抱き込んでくれた。

恋は落ちるもの、愛は満ちるもの。
そうやってあたしたち、これからも過ごしていくのね。






Fin