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足の甲 (隷属) 《シャルル×マリナ》


こちらのお話の世界観は書庫 創作(シャルル×マリナ再会編・再会後)です。
そちらを読まなくても大丈夫だと思います。






「はい、処置は終わりだよ。」
医療道具を淡々と仕舞いあたしに背を向けたシャルルだけれど、その背中が微かに揺らいでいる。

「・・・何よ、笑うならちゃんと笑えばいいじゃない。あたしだってまさか正座したまま階段転げ落ちるとは思わなかったもの。」
あたしが口を突出しながらそう言うと、シャルルはそのときの様子を思い出し耐えきれなくなったのか笑いだす。

「あそこまで見事に滑り落ちるとは思わなかったよ。・・・軽い打ち身と擦過傷と左足首の捻挫くらいで済んで良かったな。」
「そりゃあの高さから転んだ割には軽傷かもしれないけど、痛いもんは痛いわよ!あ、そういえば明日エリナとご飯行く約束してたけど行っちゃダメかしら?」
「足首の腫れが引くまでは安易に動くのはお勧めしないね。それにエリナに気を使わせるのも可哀想だろう。」

片膝を付いて、あたしの左足に巻かれた包帯を整えつつあたしを見上げてきたシャルルの青灰色の瞳に惹きこまれそうになって、あたしは頬が赤くなるのを自覚しながらそれを隠すように少し横を向く。

「エリナ、心配性だもんね。後で連絡しとくわ。」
もごもごと小さな声でそう言うと、左足首に巻いてある包帯の隙間の足の甲に、シャルルの唇の感触がする。

「・・・シャルル?」
「知ってる、マリナ?足の甲へのキスは『隷属』を意味するんだ。隷属とは他の支配を受けて言いなりになることを言う。」

「何言ってんのよ、あんたがそんなことするわけないじゃない。」
「ああ、絶対にごめんだね。」
そう言った後、あたしの耳元に口を寄せてシャルルが囁いた言葉を聞いて、あたしはシャルルの首元に両手を回し体を寄せる。


でも今だけなら、してやってもいい。



「・・・じゃあ、抱き起して?」
そっと毀れ物を扱うようにあたしの腰を抱きしめ立ち上がったシャルルが、あたしの頬に、耳元に、唇にキスをする。
「次はどうする・・・?」
少し擦れた声でシャルルが問いかけてくる。
「あんたに、任せるわよ・・・。」


微かに微笑んだシャルルに軽く唇を合わされ、あたしはシャルルに体を預ける。
シャルルの唇の感触が、左の足の甲にまだ残っていた。





Fin






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耳 (誘惑) 《美女丸×薫》

後ろから視線を感じる。

「・・・薫、人の後ろ姿を見つめるのは止めろ。気が散るだろうが。」
オレは書斎で書き進めていた書類をトントンと纏めて、軽く溜息を吐いて薫を諭す。
開いた障子に腕を組んで凭れていた薫が、こちらに歩いてくる。

「後ろから見てたらさ、美女丸の耳の形が綺麗だなと思ってつい・・・ね。」
クスクスと笑いながら、薫がオレの右耳の耳介をキュッと口に挟む。

「おい・・・。」
「知ってるか?耳にキスするのは《誘惑》を表しているんだってさ。」

後ろから覆い被さるようにオレの首に腕を回し甘えてくる薫の頭を抱え直し、唇にそっとキスをする。
「今誘惑されても、おまえはこれから東京に行くんだろうが。」

「恩師のコンサートに出ないといけなくなったからね。せっかくこちらに遊びに来てゆっくりできると思ったけど実家にも帰ってくるよ。」
そう言って背中から離れる熱に、寒さを感じてしまう。

「・・・早くここへ帰って来い。」
オレの言葉を聞いた薫が、少し目を見開いた後、花が綻ぶように笑う。
「ああ、誘惑した責任があるし・・・。待っててくれよ。」


自覚しろよ、薫。
もうここはおまえが帰ってくる場所なんだ。
責任も、取ってもらわないとな?



Fin


瞼 (憧憬) 《和矢×マリナ》

コンコンコン、とマリナの住むアパートの扉をノックすると、中からバタバタと近寄ってくる足音が聞こえる。
「いらっしゃい、和矢!待ってたのよ~!」
オレはコンビニで買ってきた飲みものと甘いものをマリナに手渡しながら、「お邪魔します。」と声を掛けて部屋に上がる。
「めずらしくおまえのマンガが雑誌に載ることになって良かったな。」
炬燵に向かい合って座ると、マリナがオレに原稿を手渡す。
「そうなの、何回も編集部に通ってようやくプロット通ったのよ!・・・なのにごめんね、アシ頼んじゃって。」
勢いよく答えたかと思ったら、急にしおらしくなったので調子が狂う。
「どうせ会う約束はしてたんだから、別にかまやしないよ。さ、ちゃっちゃっとやっちまおうぜ。」
「このお礼は出世払いで返すから楽しみにしててね!」
「いつになるかわからないから、夢話として聞いておくよ。」
ぶーっと膨れるマリナの顔を見て、オレはクスクスと笑ってしまった。



それから作業に没頭していると、ふとあることに気付く。
マリナがやけに髪を弄っているのだ。
「マリナ、おまえ前髪伸びて邪魔なんじゃないか?」
ちょいちょい、と眼鏡にかかる前髪を横に流しながら、ふぅとマリナが溜め息を吐く。
「うーん、そうかも。」
「ちょっと休憩を兼ねてオレが前髪切ってやるよ。さ、鋏持っておいで。」
集中力が切れかけていたのだろう、マリナが立ち上がって戸棚から鋏を出しオレに手渡す。
「これが終わったら、和矢が買ってきてくれた差し入れでおやつにしようか。う、肩凝った・・・。」
眼鏡をはずし赤いチョンチョリンを取ったマリナが、目を瞑ってオレに顔を向ける。
櫛で茶色の髪を梳かすと、長めの前髪が目の下までかかる。
少しづつ鋏を入れて切っていくと、雰囲気が変わり稚い感じになる。
見えた瞼に、そっと口付けをする。
ずっと変わらない憧憬の想いを込めて。
「ひゃっ、ちょっと・・・、和矢?」
驚いて身動ぎするマリナの両頬を押さえて、もう片方の瞼にも口付ける。
そしてそのまま、唇に辿って行く。
「・・・お駄賃だよ。」
唇を離す時に少しだけぺろっと舐めると、顔を真っ赤にしたマリナの顔が見える。
「あた・・・、あたし、お茶の準備してくるから!」
解放してやるとパッと身を翻して台所に立ったマリナの後ろ姿を見ながら、オレは後片付けを始める。



いつも頑張っているおまえが好きだよ。



Fin

額 (祝福/友情) 《シャルル×マリナ》

「シャルル、起きる時間よ!ジルが待ってるわよー!」
あたしがゆさゆさとシャルルを揺すると、鳥の羽根がふぁさ、と揺れるかのように長い睫毛が動いてけぶるような青灰色の瞳がゆっくりと開いていく。
こっそり思ってるんだけど、寝起きのシャルルって無防備で稚いときがある。
いつものクールさが出る前のわずかな素の顔が見れるのが嬉しい。
「おはよう、マリナ。ああ、今日は冷え込んでいそうだな。」
起き上がってベッドから出たシャルルが、窓の外から吹く風の音を聞いてふぅと溜め息を吐いている。
「午後から視察があるから出掛けるよ、マリナの予定は?」
「うーん、今日はあたしもバタバタするかな。」

あたしはぴょんとベッドの上に立ち、脇に立っているシャルルの両肩に手を置いて、額にキスをする。
不意打ちのキスに微かに揺らぐシャルルの目線と同じところに立てるのが気持ちいい。
「額にするキスは祝福を表すのですって。・・・お誕生日おめでとう、シャルル。」
そう、今日はシャルルの誕生日。
バタバタするのはね、シャルルの誕生日を祝う用意をするからよ。
クス、と微かに笑うシャルルが、あたしの頬にキスを返す。
「・・・今日は、いい朝だな。」
あたしの腰に柔らかく回る両腕の感触に、ほっと息を吐く。
「ところで、額にするキスは祝福、というのはどこから聞きかじってきたんだ?君が元々から知っていたとは思えないんだが。」
何よ、失礼ねー!
いやまぁ、確かに教えてもらったんだけど。
「ミシェルから教えてもらったのよ。彼も今日誕生日じゃない?」
「・・・ほう?」
目線で続きを促すシャルルのあたしの腰に回す腕の力が強くなったのは気のせいかしら?
「ここに来る前にミシェルと会っちゃって、友情の証にここにキスして、って額出されてしたら、祝福の意味もあるって教えてもらったのよ。」
このあと機嫌が急降下したシャルルへのフォローが大変だった。
でもね、あんたが生まれてきた日を祝福出来るのは、あたしだけの特権なんだからね?




Fin