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手首 (欲望) 《美女丸×薫》

朝の光が障子越しから入ってきて、その眩しさで目を覚ます。
久しぶりに日本に帰ってきて、そのまま美女丸の家に来ることに戸惑いを感じなくなり、まわりの環境もそのことに対して是非を問われることがなくなった。
長い時間をかけて根気よく、美女丸が説得してくれたからだ。
こんなにあたしのことを想ってくれる美女丸に、あたしはちゃんと返せているのだろうか。

「・・・起きたのか。」
先に起きて身繕いを整えた美女丸が、蒲団から起き出したあたしの腕を取り、手首に唇を寄せる。
これは美女丸がよく行うものだ。
まるで儀式のようにあたしの手首に口付けする美女丸を見ていると、不思議な気持ちになる。
「なぁ、なんで美女丸はこういうことをあたしにするんだ?」
未だにあたしの腕を持ち、口付けたままの美女丸は切れ長の瞳から視線をこちらに向け、軽くそこに歯を立てる。
「・・・っ!」
「オレは強欲なんだ。」


おまえが生きていることを感じていたい。
おまえの胸に耳を当てて生きている鼓動を感じていたいけれど、そうなると自分が抑えきらなくなり抱いてしまう。
これはその代替行為なんだ。
オレの欲望がおまえの負担にならないように。


「・・・なるべく抑えようと思っているけれど、昨日の夜のように自制が効かないときもあるがな。」
あたしの首元に散らされた鬱血の跡を、静かになぞるその指は優しい。

「聞いたあたしが言うのも何だけど、朝っぱらからする話じゃないねぇ…。」
あたしの頬にその大きな手を当て、唇を寄せてくる美女丸に顔を斜めにすることであたしは応える。

「しょうがないだろう。待ち望んだ相手が帰ってきたんだ。独り占めさせろ。」

おまえがあたしを望むなら、あたしはそれを受け止め同じように返すよ。
これがあたしたちの形なんだろう。

噛まれた手首がじんじんと痛むのが、あたしはなんだか嬉しかった。



Fin



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腕 (恋慕) 《高天×冷泉寺》

トン、とテーブルの上に珈琲を置く。
「高天、ちょっと一休みするか。」
私の部屋の本棚に整理し直した本を並べていた高天が、ぶんぶんと腕を回しながらこちらに向かってくる。

「お、サンキュ。ん、このクッキーうめぇなぁ。もしかしてこれユメミが焼いたやつか?」
珈琲と一緒に出したクッキーを頬張り、傍に立つ私を見上げてくる。
「ご名答。この間会ったときにたくさんもらったんだ。やっぱりユメミのお菓子は美味いな。」
「確かにユメミの手作りは美味いけどさ、おまえが作ったものも美味いぜ。オレ、初めて食わせてもらったとき感動したもん。なぁまた作ってくれよ、こんな話してたらすごく食いたくなってきた。」

ひもじそうな顔をする高天に呆れたが、そういえば、と思い出した。
「チョコを大量にもらったからブラウニー焼いたのがあったな。食べるか?」
「食う!」
私がそう言った途端に目を輝かせる高天に、苦笑しつつもキッチンに向かう。
ブラウニーにホイップした生クリームとミントを添え、おまけに貰い物のマカロンも添えてやる。

「じゃ、これが今日の片づけの礼だ。やっぱり男手があると便利だな。このマンションに住んでから大体は1人でやってたんだけど。」
高天にブラウニーを出し、私はもう少し本を片付けるか、と本棚に向かおうとすると、後ろからぎゅ、と抱きしめられる。

「・・・どうした?」
「なぁ、なんでおまえオレをもっと頼らないの?そんなに頼りないか?」

逞しい腕に少し力を込め、私の肩に顔を埋める。
私を抱きしめるその両腕は、男らしい筋肉と固さで私を包む。
目の前にある腕に、私は口付けする。

「・・・私はおまえのこの腕に包まれるのが好きだ。こういうのをきっと恋い慕うということなんだと思う。そうじゃなきゃ私は大人しくこの腕に収まっていないし力仕事など頼まない。」
少し力が緩んだ腕の中で、私は高天と向き合うようにし、その首に腕を回す。

「私はこうやって、愛してほしいと伝えてくれるおまえがいい。」

高天は自分の首に回された私の腕の内側に強く吸い付き、赤い跡を残す。
「・・・ああ、もっとオレを愛してくれ。オレなしじゃいられないように。」
「バカだな、高天は・・・。」

高天の耳元で私は囁く。
おまえも、私を愛してくれ。私だけを希って。



Fin