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指先 (賞賛) 《鈴影×ユメミ》

「光坂クンがハンドクリームを塗り込んで、マッサージしてくれるんです。」
「うん。」

「すぐ落ちてしまうからいいって言うんですけど、たまにこうすると気持ちいいでしょ?って、私に気を使わせないようにしてくれるんです。」
「光坂はそういう奴だね。」

「自分でも気を付けているんですけど、私の手から弟たちや父にもし病気が感染したら嫌だから、こまめに手は洗います。水仕事も好きなのでやり始めたらつい根を詰めてしまって・・・。」
そう告げると鈴影さんは、そっと私の両手を取る。

「私の指は貴女らしくなく荒れてしまいがちですが、・・・亡くなった母の指も同じく荒れてました。私はその母の指で髪を結ってもらうのが大好きでした。」

持ち上げられた私の指先が鈴影さんの唇に触れる。
とても大切なものを戴くように何度も唇の感触を感じる。

「貴女に相応しい手でなくてごめんなさい。人の目に付きやすいのは解ってるんですが、私が綺麗な手のままというのはこれからもないと思うんです。」
だって、と私は微笑む。

「これからは、あなたのお世話も私の仕事になりますから。これは私だけのもので誰にも譲るつもりはないんです。」

愛しいものに触れるように恭しく私の指先に口付ける鈴影さんが私に視線を向けてくる

「今まで家族を想い休むことなく使われてきたこの指に、賞賛のキスを。」


これからはオレのものになる君に捧げよう。


お互いに顔を合わせ、ふふ、と笑いあう。
あなたと話したいことがたくさんあります。
私のこの手を繋いで、2人歩いていけますように。





Fin
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掌 (懇願) 《シャルル×マリナ》

マリナはよく突飛なことをする。
それに慣れてきた、と言いたい所だが、予想の斜め上を行き過ぎて、これでこそマリナだなと思ってしまう。
もちろんそんなことは噯にも出さないが。

「何がしたいんだ?」
今はなぜか、久しぶりに2人で過ごすベッドの上でオレの右手の掌を凝視している。

「うーんとね、・・・シャルルの手相を見てる。あれ、生命線ってどれだっけ?」
額を擦り合わせんばかりに見てくるマリナに、しょうがないなと思い簡単な説明をしてやる。

「親指の付け根あたりから出ているこの線だ。ただし生命線だけを見てもしょうがない。他の線、特に知能線の影響があるからだ。知能線が悪く生命線も悪いのは短命の相と判断されるだろうが、健康で健全な生活を送る自制心次第でいくらでも変わるということだ。手相はコールド・リーディングの一種であり、話術で信じさせるものだからな。」

「ふーん、そうなんだ。」
オレの説明に解ったのかどうなのか曖昧な返事をしたかと思うと、今度は自分の左手を合わせてくる。

「前に日本のテレビのCMでやってたのよ。小さな女の子がね、『お手々のシワとシワを合わせてしわあせ~♪って。・・・あれ、しあわせって言ってたのかしら?まぁダジャレなんだけどさぁ、結構和んだのよね。」

だからさ、と手を合わせたままマリナは笑う。

「あたしの幸せと強運があんたと分かち合えますように・・・ってね。・・・最近またあんたに変な輩が目を付けてるってジルに聞いたから。だからマリナさんは1人で外に出ないでくださいって言われて、それはしょうがないんだけど、他にも出来ることないかなと思ったりするのよね。」

マリナはそっと手を取り、オレの掌に小さく口付けをした。

「あたしがあんたの弱みになったりしないように。」
その呟きは、懇願にも似ていて。




「・・・オレを誰だと思っている?」
マリナの手を今度はオレが取り、子どものように小さな掌に噛みつくように口付ける。
「そんなものは想定内だ、オレが死ぬまで付きまとう事項だろうさ。オレが手を打っていないとでも?」
マリナは知らなくてもいい手段は、クモの糸のように巡り合わせてある。
愛しい人を失わないためなら、オレは何にだってなるだろう。
この手に落ちてきたときから、もう決まっていたことだ。


「・・・そうよね、シャルルだものね。」
そういうマリナの顔は、安心したように微笑んで。
オレと同じボディソープの香りを纏うマリナを引き寄せ、深く唇を合わせた。



Fin




手の甲 (敬愛) 《光坂と冷泉寺》

注意事項

銀バラの書庫やBD創作、リクエスト創作で冷泉寺さんのお話を書いていますが、わたしのブログでは、

・冷泉寺さんとヒロシは恋人同士
・冷泉寺さんは日本で救急医、ヒロシはドイツでサッカー選手をしていて、時間が出来るとヒロシが日本に帰ってくる

となっています。





何でこんなことになっちゃったのかなぁ・・・。
はぁ、と溜め息を吐くと、目の前の絶世の美女がムッとしたように柳眉を吊り上げる。

「おい、光坂。せっかく協力してやってるんだから会場に着いたらそれらしくしろよ?」

「・・・そうだね、よろしくお願いします。冷泉寺さん。」

僕の腕にさりげなく腕を絡めてくる冷泉寺さんをエスコートしながら、僕は今までのことを思い出していた。





最近僕は美容師として色々な所に呼んでもらい顧客が多くなってきたのだけれど、そのうちのお客様の一人に、「あなたも一度パーティーに出てお眼鏡に叶う女性を見つけなさい!」とほぼ強引にパーティーに出席させられることになった。

恋人がいるというのなら連れて来なさい、とも言われ困っていた僕は、たまたまカットをお願いしてきた冷泉寺さんに愚痴を零してしまったのだ。
ふむ、と考え込んだ冷泉寺さんはニヤリと笑ったあと、僕を見据えこう言った。

「その時だけ私が別人になって恋人役をやってやろう。」

え、そそそんなことしたら僕が高天さんに殺されるよ!?
今はドイツでサッカー選手している高天さんは、冷泉寺さんの恋人だから!

「大丈夫だ、私から説明しておくから。」
普段の冷泉寺さんではありえないような行動に、二の句が継げなくなってしまう。
もちろん僕が彼女に逆らえることなぞなく、お願いすることになったのだった。



真っ青なパーティードレスに品よく真珠のジュエリーを合わせ、自然なウィッグをふわふわとアップさせたヘアスタイル(これは僕がやった)、瞳に青のコンタクトを入れ普段より女らしいメイクをしてピンヒールを合わせた冷泉寺さんは、別人といっていいくらい印象が変わる。っていうかメイクも僕にさせて欲しかった・・・。

冷泉寺家の者とバレると色々面倒くさいので、名前は極力名のらず、必要なときは嫁に行った従妹の名前を捩った偽名を名乗った。その従妹に経緯を説明したら気楽に応じてくれたらしい。

「さ、とっとと済ませて帰るぞ。光坂、気を抜くなよ。」
こそっと僕の耳に唇を寄せられてドキッとしたけれど、台詞はいつもの冷泉寺さんらしくて、僕はなんとなくホッとした。




「はぁ、疲れた・・・。でも冷泉寺さんのおかげでもうこういうパーティーには出席しなくてすみそうだよ。本当にお世話になりました。」
パーティーが終わったあとタクシーに乗って冷泉寺さんの住むマンションに向かっていたのだけど、「少し歩くか。」と冷泉寺さんに言われ途中で降りた。

「いいや、私も久しぶりに着飾れていつもと違う気持ちになれて良かったよ。なんせ私は白衣がトレードマークだからな。」
「え、僕は救急医として働く冷泉寺さんは格好良くて綺麗だなって思ってるよ?高天さんだって会うたび僕にそう言って惚気てくるもん。もう耳にタコが出来るくらいなんだよ?」

「・・・あいつは何を言ってるんだか・・・。」
そう言う冷泉寺さんの顔は仄かに赤らんでいて、僕はなんとなく高天さんが羨ましくなってしまった。

「・・・ねぇ、どうして今回のこと引き受けてくれたの?」

僕の少し先を歩く冷泉寺さんに気になっていたことを聞いてみると、冷泉寺さんは僕を振り返り、独り言のように呟く。

「いつもと違う私になれば、・・・もう少し強くなれそうな気がしたんだ。」

そう言って目を伏せる冷泉寺さんの長い睫毛が頬に影を作り、僕は胸がきゅっとなる。

冷泉寺さんの憂いは高天さんを想ってのことが多い。
怪我が多くなっているとか、チームが荒れているとか。

「・・・僕さ、高天さんと冷泉寺さんが一緒なら、どこにいてもやっていけると思うんだ。」

僕の言葉に軽く目を見開いた冷泉寺さんは、「そうだな。」と破顔した。
冷泉寺さんの綺麗にマニキュアされた、けれど仕事柄少し荒れた手の甲を取り、僕はそこにキスをした。
切なく恋人を想うこの人に敬愛を込めて。

「ね、冷泉寺さん。今回のこと高天さんになんて言ったの?」
「・・・電話は繋がらなかったから、メールで知らせておいた。」
それが何か?と言いたげな冷泉寺さんに、僕はクスッと笑って伝えた。
「お迎えが来てるよ。」
それもすごい顔してね、と僕が呟くのと冷泉寺さんが前を向いて驚くのが同時だった。
「・・・高天!」
「あのな、アキ。こいつオレのだから。・・・もうこういうことさせるなよ?」
苦虫を噛んだように言う高天さんに、僕は笑ってしまう。
「高天さんもあんまり冷泉寺さんに心配かけちゃダメだよ?ぼやっとしてたら攫っちゃうから。」
「光坂、何言って、・・・って高天!?」
ひょい、と冷泉寺さんを抱きかかえた高天さんが、冷泉寺さんのマンションに向かって歩いていく。
「・・・冗談じゃねぇ、誰にもやらねぇよ。」
そういう高天さんの顔を冷泉寺さんは見えなかっただろうけれど、僕は見た。
射抜くような視線はそれだけで人を殺せそうだった。


このあとの二か月後、冷泉寺さんはドイツに渡った。
どこにいても医者はやれる、という彼女は、本当に綺麗だった。



Fin