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共に偲ぶ (美女丸×マリナ)

「何よ、ずるいじゃない!あたしにもちょうだい!」
あたしに背中を向けて縁側でひとりでいる美女丸にそう声を掛けると、冷酒を持った手を床に置き溜息を吐く。
「おまえな…、久しぶりに帰ってきて言うことがそれか?」
「ただいまー。取材終わったので帰ってきたの。だから労ってあたしにもお酒ちょうだい!」
「そんな紋切型の挨拶はいらん」
「まあまあ、いいじゃないの」
持っていた荷物を置いて、座っている美女丸の膝の上に乗ってやると、やれやれという感じで背中を抱き込まれる。
「あんたも大人になったわよね。昔ならそのまま立ってあたしを落としてたでしょ?」
「おまえと一緒いるようになって諦めというのも大切かもしれんと思うようになってな」
「さりげなく貶されてるわよね、気にしないけど」
1つしかないお猪口を、飲み干してはまた満たし、お互いに飲みながら静かに照らす月を見上げる。
「うふふーん、月が二重に見えるわよぉ」
「これは度数がきついんだ。これでもう止めとけ」
顎に手を回され、口移しに流れ込んできたお酒はとても美味しくて、酔いが急に回ってきた。
「1人で、亡くなった人たちを偲ばないでよ」
あんたのそんな背中、見てたくないのに。
「おまえが置いて行った不細工な茄子ときゅうりの精霊馬ならそこにあるぞ」
「あれ、なかなか上手く立たなくて苦労したのよ」
「割り箸差すだけだろ」
「不器用大魔王の美女丸に言われたくない」
「今のこの家には、おまえがいる痕跡があちらこちらにあるからな。1人で偲んでたつもりはない。第一今、おまえはオレの腕の中にいるだろう」
「明日、あたしもお墓参り行くわ。遅くなっちゃったけど」
「帰り、新しく出来た和菓子屋に寄るか。あんみつが絶品だそうだ」
「行きたーい」

甘いものの話聞いたから食べたくなった、と騒ぐあたしに甘い冷酒を載せた舌があたしの口を塞ぐ。
背中に感じる美女丸の体温が心地よくて、あたしは目を閉じた。


Fin

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