FC2ブログ

長い春 1 (美女丸×マリナ)

どうしてここに居るのか。
とても不思議だ。


小菅の別れのあと、少しの間和矢と過ごす事ができた。
あたしは仕事(なかなかなかったけどさ)、和矢は学校があったのでそんなに頻繁に会えなかった。
会うと彼は優しくしてくれたけど、あたしは違和感を感じていた。
彼は・・・あたしを恋愛感情というよりは母性のように見ていた。マリィの身代わりというわけではないだろうけど。
あたしは彼と愛を始めたかったけど、それは無理なのだと思い知った。
素直に話してお別れをしてもう三年になる。


今年二十歳になった。
あたしは仕事を少女マンガから、旅行記や体験記を描くマンガに変えた。
あちらこちらに赴いて思ったことや体験したことを描くのはあたしの性にあっていたようだ。
徐々に仕事をもらえるようになり、一人で生活するくらいは稼げるようになった。
松井さんから新しい担当さんを紹介してもらって、いろいろ助けてもらったのもありがたかった。


仕事に追われながら思い出した。
美女丸が一人になってもう長くなる。


「おまえ、何しにきたんだ。」
美女丸が相も変わらず広い玄関先で出迎えてくれた。
「久しぶりに会ったのにその言いぐさはないでしょうが。ちゃんとそちらに行くって連絡したじゃない。」
あたしはちょっとむくれた。
「訪問の理由は告げられてないがな。まあ、上がれ。」
「いらっしゃいまぜえ、お久しぶりでございますねぇ。相変わらずちっこいですなあ。」
「これでも7センチくらいは伸びたんですよ!蘭子さん、その節はお世話になりました。」
「あれま~、ちゃんと挨拶ができるようになってますですねえ。天衣無縫でしたのに。」
「仕事でいろんなところに行くので鍛えられましたよ。でもまあお手柔らかにお願いします。あ、美女丸これ。」
「なんだこれは。」
「お仏壇にお供えしてちょうだい。出版社の近くに美味しい和菓子屋さんがあるのよ。」
「明日は雨でも降るんじゃないのか。雷かもしれんな。お前が食い物を持ってくるなんて。」
美女丸が涼やかでつり上がり気味の瞳を細めて笑って言う。
あれから年月を経て美女丸は落ち着いて風格が出ていた。凄烈な雰囲気になっていた。
あたしはそれをまぶしく感じながらも、さらにむくれて見せた。
「おあいにく様。ここに来るまでに原稿終わらせて担当さんに渡してきたから、担当さんがお饅頭おごってくれたんだよーだ。今の担当さん優しいんだよ。」
「・・・・・どんなふうに優しいんだ?確か若い奴じゃなかったか。」
お仏壇があるお部屋までの長い廊下で美女丸に聞かれたけど、なんだか温度が急に下がった気がするのは気のせいかしら。
「仕事に関しては飴と鞭で手綱を握られてるけど、それ以外では餌付けされてる感じかな。食べるのは好きだけどそんな昔ほど食べないけどね。」
「食欲に関してはおまえの言うことはあてにならんがな。ほら、入れ。」
日本間に案内され、どこもかしこも奇麗に掃除され整えられた空間に座る。畳のいい香りがする。
お仏壇にご挨拶をし、座りなおすと蘭子さんが紅茶とケーキを持ってきてくれた。
「先ほどはお饅頭とのことでじたので、こちらでは洋風にしてみましたです。ごゆっくりどうぞ。」
「ありがとうございます。美味しそう!」
あたしが手をたたいて喜んだら、
「そんな無防備だから餌付けされるんだ。付けいれられるなよ。」
とぎらっと瞳をきらめかせて言われてしまった。


変な美女丸!








.
スポンサーサイト



コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/09/09 (Mon) 18:44 | # | | 編集
ゲスト様

> > ゲスト様、はじめまして!
> > コメントありがとうございます(*´▽`*)
> > シャルルも好きなんですが、ひとみ中毒を再発したら美女丸推しになりまして*笑*
> > また創作もしていきたいと思いますので、よければまたブログにおこしくださいませ(*´▽`*)

2019/09/16 (Mon) 23:03 | ゆう #- | URL | 編集

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する